M★A★S★H  住めば都のフールズ・パラダイス

マッシュ 

 あ、なんかタイトル打っただけでパラダイスになっちゃった。samurai-kyousukeさんに連続でツボをつかれました。そいで、映画の詳しい紹介はそちらでどうぞ。私のはいつも通り、単なる感想文ですから。

b0016567_1931647.gif アルトマンは、出無精の私をロードショーまで引っ張り出す数少ない監督の一人なんだが、 この映画から得たものと言えば、
軍服の着崩しはアメリカ陸軍に限る」というどーでもいい信念(大藁)と、
 ドナルド・サザランド演じるホークアイ(切れ者)・ピアスとエリオット・グールド演じるトラッパー(スケこまし)・マッキンタイヤが、今に至る私の偏愛する男のパターン1となった



 まあ、それは男の好みの問題だけでもない。このM.A.S.H.=mobile army surgical hospital 米陸軍移動外科病院ってとこが、私には異様に心地よい空間だったというのがある。
 相当ブラックな、洒落のめしている映画なんだが、私はいつも知性というのはユーモア・センスつうかお笑いの感覚に比例すると思っている。そいで、自分をまず笑えない人間に、人を笑う資格はないと思っている。それがブラックユーモアってことだ。
 相手を笑うだけなら、そりゃ単に相手を誹ってるだけじゃん。ブラックユーモアてのは、そのどっちをも笑い飛ばすことだもん。お笑いってのは、善悪をどうこう言うんじゃなく、その善悪のあり方が載ってるテーブルごとひっくり返して、無しにしてしまうもんだもん。
 このM.A.S.H.ってとこじゃあ、みながみなまず自分を笑い飛ばす、その上で、こんな俺に、俺らに笑われてるあんたらって何?と切り返す。
 とっても、正しいし、とっても、かっこいい。
 だから、ここは私の魂の故郷の一つだったりする。私はへたれだから、他にもそんな架空の故郷を見つけては、何とか現実を凌いでいるんです。

 んで、ホークアイとトラッパーってのはろくでもない奴らでして(藁)。いつもしれーっとしたポーカーフェイスでだれーっとしてるんだが、頭んなかじゃ何かしら企んでいる。そいで、騒動を巻き起こしては、自分たちはぬけぬけとそこから欲しいものだけいただいて逃げ延びる。
 この常識なんかはなっからないよな二人(実際は三人組だが、デュークは陰が薄い)は、いわゆるトリックスターだけど、これは、相当頭が切れないとただのはた迷惑で洒落にならない。相当、頭脳の反射神経がよくないと、ダメなんだ。

 小学校でTVの洋画劇場を見た私は、男はこうでなきゃと思いこんでしまった。思いこんだおかげで、人生、かなりを棒に振った気がする(藁)。どうも、世間が思う「男の誠実さ」と私が求めるものとが折り合わなくてさ(藁)。
(でも、ここまで切れ味のいい連中ってのは、現実は無論、実はフィクションでもなかなかいない。ずーっと後になってSNL全盛期のスターたちや、『パトレイバー』の後藤警部補という似たようなワルを見つけ出したときは、嬉しかった)

 そして勿論、ホットリップス、サリー・ケラーマン。登場時点ではこちこちの石頭だったのが、彼女、自分が思いきり笑われたことで、悟るんだよね。そいでからの変身ぶりの見事さはsamuraiさんも書いている。
 だから、彼女はこの愚者の楽園に残ることが許される。けど、別の石頭は追放される。それを演じてるのがロバート・デュヴァル。嫌なオヤジを実に巧みに演じてて、あったり前だけど、コケにされる役ってのがむしろ一番、役者にユーモア・センスが必要になるんだよな。でないと観てるこっちは笑えないもん。

 勿論、これは朝鮮戦争が舞台になっていて、そこにはヴェトナム戦争が暗示されてる。
 この愚者の楽園にも毎日、怪我を負った兵士が運び込まれる。死ぬ患者もいる。馬鹿じゃないホークアイやトラッパーが傷ついていないわけがない。医師として戦地に派遣されてる以上、それで傷ついたなんてぬかすような、甘えた根性の持ち合わせがないだけだ。
 だから、彼らの乱痴気騒ぎは、狂わされる前に自分から狂う、という自己防衛でもある。現実の地獄に飲み込まれる前に、それを笑うしかないという必死の笑いだ。
 
 だからこそ、最後に、帰国命令を聞いたホークアイは初めて、泣き笑いのような、素の笑顔を見せる(サザランド上手い!)、それを聞いたみんなも、ふっと素の寂しさを見せる。
 淀川長治先生は、それを「おもうろうてやがて哀しき」アルトマンと言った。

 これがこの映画が一級の反戦映画である理由だと思う。アルトマンは、『プラトーン』(ストーンの「当時のアメリカは悪かったかもしんないけど、俺は誠実に悩んでたんだって世界に言いたい」映画)のように正義は叫ばない。
 なぜなら、正義一点張りの叫びはそれに対するまた別の正義の叫びを産む。そしてまたどっちが正義かの闘いが始まる。笑いはその空しい闘い自体をひっくり返せる力を、少なくとも可能性を持つと思う。持つと、私は信じてる。

 んで、この映画、かなりアドリブで撮られたようで、完成試写を見た脚本家は俺の台詞にないやつばかりだ!と激怒したらしい。つうような曲者揃いの役者を使い、ひねくれた物語が軽やかに疾走する映画が、私の愛するアルトマン・タッチ。
 長いスランプと不遇の後の見事な復活、『プレイヤーズ』はともかく、最近、なんか重厚長大になってきた感じがして、『ナッシュビル』や『ウェディング』が好きな私は、ちょっぴし寂しい。

 最後に、ドナルド・サザランド、まあ髪はもしゃもしゃで年中何かにもたれてないといられないようなだらしない姿勢なんだけど、それを長身痩せ型、手足の異常に長い体でやられると無類にセクシーだ。最近は怪優扱いだけど、その系統でも、「僕って名優」光線を出したがるアンソニー・ホプキンスなんかよりずっと評価されるべきだと思う。しかし、彼見てると、キーファー・サザランドがいかに父の才能を受け継がなかったかよくわかる。というか、体格似なかったのが致命的か。
 エリオット・グールドも今では『フレンズ』のロスのとうちゃんと思われてるけど、無口な役ながら、フードの奥からいたずらっ子みたいに目がきらりとするのがたまんない。彼はこの後、またアルトマンと組んで、『ロング・グッドバイ』というハードボイルドの傑作を残した。チャンドラーのフィリップ・マーロウものでは、古典であるボギーとツボ直撃系のロバート・ミッチャムも捨てがたいが、個人の好みではこれがベストかなあ、やっぱりさ。
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by acoyo | 2004-11-15 19:32 | 映画・ドラマ | Trackback(1) | Comments(10)
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Tracked from かたすみの映画小屋 at 2005-04-18 21:52
タイトル : M★A★S★H マッシュ
MASHとはMobile Army Surgical Hospitalの略。日本語では米陸軍移動野戦外科病院のことだそうです。... more
Commented by forest-sea at 2004-11-15 21:13
じゃ、歌おうか!
「That suicide is painless ♪ 」
はは、やっぱり歌うんだ!フィー・フー!
Commented by samurai-kyousuke at 2004-11-15 21:41
acoyoさん、トラックバックありがとうございます。
ブログ楽しく読ませていただきました。ロバート・デュバルは芸達者ですよね。「地獄の黙示録」でも熱演しておりました。
これからもよろしくお願いいたします。
Commented by zazies at 2004-11-15 22:38
わかる、この2つ違うのはわかるんだけど「1941」が出でくるのぉぉぉぉ
あとで、復習いたしまする。
ドナルドさんはカサノヴァのイメージが強すぎてこまるって言うのもあるし。
Commented by kingdow at 2004-11-15 23:56
「マッシュ」といえば、TVシリーズのアラン・アルダの顔しか浮かんでこない・・・。ゴメンなさい!怒らんとってください!
Commented by belltone at 2004-11-16 01:03
あはははは!「軍服の着崩しはアメリカ陸軍に限る」!
いいなあ、そういう考え方。「限る」ってのが。
僕も「ミリタリージャケットはスェーデン軍のものに限る」と決めております。
ほんとに「哀しい」が伝わるのは「おもしろい」時だけだと思います。
見てきます。
Commented by wake1 at 2004-11-16 04:33
「M★A★S★H 」もイイけど、同じアルトマンの「Beyond Therapy」 (1987) って見た? 最後の最後まで、腸捻転って感じでわらかしてくれるさ。主人公がバイの男なんだけど、そいつの奥様っぽい中年ホモとその有閑ママンの、ちょっと狂ったおかしさとか、セラピストのボケっぷりが見事だよ。ビデオとかあるのかな。

ジュード・ロウは、大昔、どっかで調べたら、ロスの高校に行ってたとかいう情報が飛び込んできて。今調べたんだけど、なんとも分からなかった。ちなみに、ああいうM字ハゲは美形だとセクスィー、平均顔だとただのオッサン公務員に見えてしまいます。
Commented by acoyo at 2004-11-16 13:21
>forest-seaさん
 んで、It brings on many changes and I can take or leave it if I pleaseってかあ?

>samuraiさん
 いつもありがとうございます。こりからもよろしく~。

>zaziesさん
 いえいえ、「1941」は私も好きでっせ。J・ベルーシ好きだし。そいで、確かにね、観てない人にドナルド・サザランドかっこいいと言うと、その「カサノバ」が邪魔をするみたい(藁)。

>kingdowさん
 あっちも観てました。あっちも好きです。TV版の方が、後半、戦争のきつさはよく出てたと思います。だから、怒ってないよ~♪
Commented by acoyo at 2004-11-16 13:26
>belltoneさん
 がっかりしても怒らないでね~(低姿勢w)。ちなみに私は着崩してない版は英国軍と決めております。スウェーデン軍? 今度調べてみよう。

>wake1さん
 わ、それ観たかったんだよー。そんなにいいのかー。またTSUTAYAで執念の検索かけないとな。M字禿つうか秀でた額つうのは確かに美形特権ですが、先行きを考えると哀しくなるの。スティングの例があるし……。
そうか、あのおちゃらけジュードはロスの高校になんか行ってたんすね。やっぱパブリックスクールで叩いてもらっとかんと英国貴公子顔は無理。


Commented by wake1 at 2004-11-17 00:13

ビヨンド・セラピーは登場人物に対する視線が
独特の突き放し&冷たさがあってよい。
笑えた。

ジュードは、なんか胸毛にえらいこだわりがあるのか、
ぜったいに脱毛しないよね。

ちなみに、男子が
プロのデルモになるときは、プロのワックス師の手で
ベリベリ脱毛してから、事務所にいらっしゃい、という
えらいモデルさんのアドバイスを呼んだことがある。

ジュ~ドの高校って、けっきょくドコなんですかね。
なんか呼んで、ゲゲ、ほんと?って思ったんですけど。
Commented by acoyo at 2004-11-17 00:24
>wake1さん
 ググったけどよくわかんなかった~。でも、何で私は彼の高校まで調べてるんだろ(藁)。ジュード・ロウの胸毛は、あの下世話な美貌に映えてナイスかと♪ 剃ったってモデルには使えないでしょう、彼、顔でかいし。