「ほっ」と。キャンペーン

アニメ・オープニング・クレジット・ベスト5 #2 問答無用の1位、『海のトリトン』

 まず、この企画におともらちの夏葉さんが乗ってくれました。はっきり言って……負けました(爆)。教養の程度が違います。すいません、できることなら顔洗って出直したいです。
つかみはOK!(瀬戸際日記Neo)

 ……ということで、『トリトン』についてはごちゃごちゃ説明するのも長くなるので  
wiki
 だから、アニメほとんど観てなかった私が(しつこい)、毎回正座して観てたんだってば、小学校のとき、夕方の再放送でだけど。最終回観た時は茫然自失になりましたよ。

 んで、何ヶ月か前、例によって自室でYoutubeめぐりをしていたシーゴラスが「おおっ」と声を上げた。心筋梗塞でも起こしたかと覗くと、「『海のトリトン』のオープング、今見てもすげえっ」
 私は何を言うかなと鼻白んだ。そりゃあ、あれは凄いわよ。数年前、ANIMAXで再放送した時に全部録ってすごいわねえと互いに再確認しあったではないの。そんなことで楽しく安倍川餅食べてる妻を呼びつけるなと私は自室に戻った。
 それからまた数ヶ月後、今度はわたくしが自室でyoutube遊びをしていて、ふと『海のトリトン』のOPを観た。そして、そのまま携帯で仕事中のシーゴラスを呼び出した。
「すげえ、このOPすげえっ」
 シーゴラスは、だから僕があのとき言ったではないの、なんで君は僕の言うことを耳半分で聞くかな、でもね、僕、今、会議中でね、目の前に専務が居て僕の報告を待ってるの、そこで「トリトンがね」とか言えないわけ、そこんとこに深い理解と洞察が欲しいのよ、わかってね、じゃねと電話を切った。
 私は憤然とし、この熱いカンドーが今、この瞬間にわかちあえないのなら、なんと結婚とは無意味なものかと思った。 

 とあれ、後にエヴァで展開される音楽とアニメのダイナミックな動きのシンクロを最初に始めたのは富野なんだってことで。しかも、それは今見ても、十分鑑賞に堪えうるどころか、今のアニメのOPと並べてもなお、傑作と言い切れるもんだという。それに私はべっくりしたわけな、今更だが。

 ツヅク





 で、このアニメ自体ご存じではないという方も、絵の線の古さや粗さなどには目をつぶっていただき、純粋に一個の映像としてご覧になってみてください。カメラワークやフレーミング、動線の処理など、そういうとこ見ていただくと、「お!」が絶対にあると思います。

 なお、富野は総監督なので、OPは別の人がやってるのかもしんない。うちはもうマメにインタビュー読んだりしないんでよくわかんないけど、他の監督がやったにせよ、非常に富野くさい画面だし、彼が監修し、OKを出したことには間違いないので、富野、として書きます。そこもよろすく。



1.最初の爆発から当時は驚いたが、その岩石がタイトルになってすっ転がるのにはなお驚いた。今でこそ古くさいが、当時は相当インパクトあったのよ。シーゴラス曰く「富野、こういうの好きだったと思う」
2.ついで白イルカのルカに乗ったトリトン、画面下ぶち割って登場、そのまんま今度はぎりぎり上一杯にジャンプ。今でもこれだけ引いた絵を使うのは少ないと思うが、これだけ引いてるからジャンプの高さが強烈に印象づけられる。それに海の動きがダイナミック。当時の技術では作監、号泣したのではないか。
3. その後、なおも細かくジャンプ。ここで見て欲しいのは、このちいちゃいトリトン、「おっとっと」とバランス取ってる、それも延々。これも今だってそうそする奴いないよ。せいぜい宮崎くらいか。
 この「おっとっと」+ルカの泳ぎ+波の不規則な動きと、画面の端々まで「動かしている」、そのスピーディでスリリングな動きが、さらに歌の疾走感を加速させている。
4.今度は波頭の勢いに任せてどん、とトリトンとルカが前に、そいでトリトン切れてルカのアップが一瞬。まんま砕けた波で画面が覆われ、いきなり今度は海中にカメラは動く。この「1分24コマなんてやってれっかよ、金も技術もねえんだよ」の日本製アニメが苦肉の策で編み出した『コマすっ飛ばし&止め』、それによってジャパニメーションは無敵のスピード感とリズム感を得たわけで。その見本のようなシークエンス。
5.再びカメラ引く。「未来の国を 少年は探し求める」と歌われる中、トリトンの前には、何があるかもわからない白い「行く手」が。この映像的拡がり。
6.ドラム、どこどん! 止め絵連打。はい、エヴァのあれのオリジンです。
7.カメラは今度は海鳥の視点。広がる海の彼方には、揺れる揺れる揺れる。水平線も波頭も揺れる。動画班は泣いている。
8.トリトン、アップからカメラ引きます。んで、これも今ではフツーだけど、この当時で富野、カメラぐるっと回してます。
9.トリトン、崖からダイブ。歌の伸びに会わせるように大きく弧を描いて落ちていく。マントに孕む風まで見えるようにカメラ寄ると、画面右手ぶったぎってルカが飛び込んでくる。このタイミングがすごい! マジこれ、すごい! そしてそのまま、二人は画面左端切って消える。これはよくある手法だけど、これやると「永遠に飛んでるか」のような感じがするわけ、見る側は。
10.この後、遠く旅立つ一人、までちょっとお休み。弁えてるな。
11.なんで休んだかといえば、これがあるから。はい、最大の見せ場、GO GO トリトンのシークエンス。早い動きのカット連打連打、止め!の繰り返し2連発、さらにラスト、Go Go Go Go Goのダメ押しアップ五連打、しかも全部ホワイトアウトがけ 最後の最後についにオリハルコンがすらりと抜かれ、このままバックホワイト引きで終わりかと思えば……。
 おおっ! 弦のじゃん!じゃん!で、また「動き、止め」の細かいストローク。だめ押しの上に突き飛ばされたようなもんで、そのまま海原を去って行く再びロング画面でしめるかと思いきや、フェイドアウトしてく音のちゃんちゃかにあわせてまたジャンプ、最後のじゃかじゃんでなおも飛ぶ(爆)。
 
 1分36秒。いい加減映画もアニメも観てきた私が、いや、いい加減観てきたからこそ、なおさらわかるこの凄さ。一瞬のだれもない、見せまくりの映像。
 
 確かにどれも映画ではありふれた技法だし、虫プロは当初から常に映画を意識した映像作りをしてきた(『ジャングル大帝レオ』や『ワンダー3』のOPなど)。しかし、それを当時の技術ではぎりぎりのレッドゾーンレベルでやってのけたのは、富野だったと思う。
 どれも今となっては珍しくもない手法であるにしても、それをここまで音にあわせてびしっと編集されているのはそうはない。この音楽シンクロ率はある意味(90年代の技術に助けられてる)エヴァよりすごい。誰が時間見たんだ。どのシークエンスもタイミングが完璧、なんだわ。

 たとえばさあ、コンピュータ使って音とあわせたとするじゃない。でも、それだと揺らぎがなくて、時計みたいにきちっとはしてても、「ぴったし」って感じはでないのね。音と絵が共にグルーヴしてフィットする感覚にならないわけ。
 そう、富野の動画にはグルーヴ感がすっごくあるんだ。
 
余談1:これは昨今のフルCGとかにも言えることで、私はわりにあれ、つまらないw。何故かって動きは流麗だけど、タメ(とラインの微妙なデフォルメ)がないから、動きにテンポが生まれない。そんなずれが生む揺らぎがないから絵がリズミカルに躍動しない。だからどんなにすらすら綺麗に動こうが、玩具が動いてるみたいで、グルーヴィじゃない。
 つまり、セルの技術がないと、ジャパニメーション独特のグルーヴ感はでない。言い換えるなら、「止め絵でどこまで見せられるかのセンス」だな。んで、それはポーズ取らせりゃいいってもんじゃないんだよ、F田さん。
余談2:音楽シンクロなら河森も有名だが、彼はOPという限られたシークエンスのパッケージではあまり本領発揮できないよな。やり方が富野とはやや違うから。河森のスタイルはヴァルキリーのスピード感+納豆ミサイルの板野サーカスという、ノンストップの快感で見せるものだもん。

 
 当時、小学生の私は何事かと思ったよ。ともかく、こんなもの今まで観たことないと思った。これは世界で一番かっこいいと思った。世界で一番どきどきするものだと思った。勿論、本編も世界一だと思ってたけどw。
 毎回、絶対にオープニングから見逃したくなくて、再放送の時間には万障繰り合わせてTVの前に座り込んだ。宿題って何それ。庭で「散歩散歩」と吠えまくるうちの犬など無視してた。
 そして、この96秒+本編の間、私はものすごく幸福だった。世界で一番かっこよくてどきどきするステキなものを観ているときの子供というのは、世界で一番幸福なんだよ。

 そんな風に「エヴァ」の庵野も樋口も、「マクロス」の河森も、「エウレカ」の京田や吉田も、それぞれ年代はずれながらも、世界一幸福な子供として、やっぱりこのオープニング・クレジットを観ていたに違いない。
 彼らが後に作ったもののすべての原点が、そして、今になってもなお超えられない何かが、ここにはある。
 で、さらに言い足したいのは、あのOPには「未知なるものに向かっていく旅立ち」があった。刺激的なエンタメってだけじゃなくて、そこには「未知なるものへときめき」があったわけだ。
 そのどきどきがあったればこそ、あれは単なる快楽だけじゃなくて、幸福だったんだよね。
 
 私はファーストガンダムのリメイクなんて今更別にしてほしかないし、アニメの実写化には全然興味ないけど、このオープニングだけは、今のアニメーターと今の技術で「このまんま」再現してくんないかなあと思う。それだけはホント、見たい。
 
 ちなみに、その富野御大のいまんとこの最新作OP、ここでもやってくれましたよ、じいちゃん。つか、このオープニング観た瞬間、これは快作だと。

■OVERMANキングゲイナー
この『キングゲイナー』は富野が、自分がアニメ界に残した功罪、オウム事件以来、その罪の部分を償おうとずーっとやってきたことの集大成みたいな作品である。『海のトリトン』とこれと、それと富野のことはいつかきちんと書きたいなあとは思ってる。
 
 んで、なんでベスト10のつもりが、5になったかと言えば、私はこのトリトンとキングゲイナーと、後、『ザブングル』も入れたかったわけ。それでルパンとタイムボカンとグレガラでちょうど10個だいと思ったんだけど……富野3本、ガイナックス2本、いくらなんでも偏りすぎとw。
 とはいえ、私は、ぶっちゃけ富野とは絶賛半分全否定半分のおつきあいだから。それもどうかなあということで、敢えてベスト5にした次第。
 でも、悔しいのでリンクだけ入れる。いいんだぞ、戦闘メカ ザブングル。実は一番最近観たアニメだったりするw。

 で、そういうことやってたら出崎さん、お亡くなりになられて、ああ、しばらくスパロボの新作がPSP行って寂しかったからかロボットアニメ中心で考えてたあ、ごめんね、ガンバ! と涙しているという。

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by acoyo | 2011-04-19 03:37 | アニメ | Trackback | Comments(10)
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Commented by micchii at 2011-04-19 22:46 x
再びどうもです。

例によって観てないので「初見」ですが、2.の引きの絵ですでに「もっぺん見せろ」とw いやあ、これは凄い。
映画でも、引きの絵はいくらでもありますが、ここまでおぉ~っとなるのはそうは拝めないです。

一つ一つ触れていったらとんでもないことになるので、あえて一つだけ。「グルーヴ」、ブラックミュージック好きとしてはこの言葉に脊髄反射w 
そうなんですよね、「きちっと」と「ぴったし」の違い。これだけでまた延々と長くなりそうですが、おっしゃるように最近のフルCGがつまらない原因は大いにここにあるかと。

いやあ、またこんなとんでもないもの見せていただいて、冥府魔道の先はバラ色の未来ですねw

最後に、「熱く語ってしまいました」と書いた『ウエスタン』が熱くも何ともなかったというこの絶望的なまでの敗北感。
今回の教訓は、「ぶっちぎりの1位はエントリーを分けろ」。
師匠、一から出直してきます。
Commented by acoyo at 2011-04-20 00:15
★micchiiさん
喜んでいただけて幸いでございます。いや、私もべっくりしましたんで、ホントに。
グリーヴの件は、書きながら思いつきましたw。思いついたわりには自分でも納得できるなと。結局、CGはツールですから、単に使いようだと思うんですね。ただ、問題は観る側が、あのパンクチュアルなテンポに慣れて、グリーヴィなリズムに反応しなくなってる気もします。
一位を別けたのは、単に「だらだら長い」からなんですよ。読む人の手間考えたら、もっとコンパクトにまとめろよと日夜自分を叱っています。
さて、他のエントリはさんだら、とっとと映画のオープニングクレジットまたTBさせていただきます。でも、その前にこのスキン変えないと、コラムが狭すぎてw。
Commented by tonbori-dr at 2011-04-20 00:18
トリトン、西崎の御大がやった仕事でもあるんですよなーw
まあ富野さんも初期ヤマトでコンテ切ってるし。
でも富野さんのOPってけっこう心に残るのが多くてザブングルもそうですし後番組、ダンバインも良OPでした。EDもいいんですけどねw
Commented by 夏葉 at 2011-04-20 12:21 x
なんて素敵な企画!
わたしもやっていいですか?
週末までにはあけだいですわ。
姐さまとカブルのあるかなー??
Commented by acoyo at 2011-04-20 15:06
★tonboriさん
はい、西崎です。だからこそ、ヤマトのあの俺たちは闘うより愛し合う云々の台詞はうぜえなあとw。富野さんは絵コンテ1話分だけだったと思います。なんか、喧嘩したんですよねw。 
富野さんはOPうまいですね。昨日、シーゴラスと話したら、「作品のプロモーション効果っての考えてたのは、当時、彼だけじゃないか」と。

★夏葉さん
あ、どーぞどーぞ、いくらでも。前のエントリで残り4本紹介してますが、被ったっていいじゃん、どんどん遊ぼう!
Commented by kiyotayoki at 2011-04-20 17:36
「海のトリトン」の原作者って手塚治虫だったんですね。いや知りませんでした(汗)
それにしてもこの躍動感はすごいですね。
最後の月に向かって跳ねるイルカなんて、ラッセンあたりがその構図をまんまマネて描いてそうですし。
Commented by 森と海 at 2011-04-20 23:50 x
>コンピュータ使って音とあわせたとするじゃない。でも、それだと揺らぎがなくて
ドッカで聞いたか読んだ話だけど、リズムというのは点ではなく円の並びだとかなんとか。掻い摘んで言うと、円の芯がドンピシャのタイミングで、進行方向に向かって僅かに前方だと走る感じになり、後方だとタメた感じになるとかなんとか。勿論、それが一分の隙もなく整然と並べば、タイミング的には一緒なんだけど、僅かにズレが発生することと他の音色との対比からそんな感じになるというらしいっす。プログラムでやるとするなら1/fとか使わないと難しそうです。ブラッフォードのおっちゃんのタムなんか、微妙に遅くてペンっていう(高)音色でなでかニタニタしてしまうのですw
Commented by acoyo at 2011-04-21 13:47
★kiyotayokiさん
原作は手塚なんですが、あれは富野さんの作品であると手塚さん自身は思ってたみたいです。
あの躍動感はすごいでしょ。ラッセン……ああ、言われてみればそうだわw。

★森と海さん
わあ丁寧な解説ありがとうございます。
そう言えば、高橋幸宏がS・コープランドのドラムについて前のめりのずれで、R・スターのための微妙さは実は凄いんだとか言ってましたが、こっちの説明だとホントよくわかるなあ。
ある意味じゃ、プログラムするより描いた方が速いってんですかね。映画のフルCGはそこんとこで、これからどうするかだな。
Commented by 夏葉 at 2011-04-22 22:23 x
姐さまあ、やっぱりTBできませんでした。
くっすん。
でもわたしも書きましたので、おヒマなときに見てください。
かなり偏ってまーす。
Commented by acoyo at 2011-04-22 23:20
★夏葉さん
ええっ? 今日、他の人にも言われたのよ。やばいなあ……あのね、後で行って記事リンクします。ごめんねえ(涙)。