『幻の湖』のDVD 何故、幻のままにしておけなかった、東宝、自棄なのか。

東宝50周年記念の大作「幻の湖」

2006.6.3追記
あのsantapapaさんがまさか500本目でこれをお上げになるとは(爆藁)

No.500(かたすみの映画小屋)

 これな。
 これ……これ、Jaquarmenさん、どこで拾って来たのかしんないけど、あなた、凄いモノを拾って来ましたね。座布団10枚。さあ、深川で芸者と遊んどいで、あたしのつけだよ。

 ストーリー、先に読んでね→キネ旬データベース

 ……んで、読んでると、なんか変わった映画だなあ、とか思うでしょ?
 違うの。
 全然、違うの。
 すっごーーーー(エンドレスで伸ばしたい、それもクレッシェンドで)く、変な映画なの。

つうかね。私も長年、噂だけ聞いていて、去年、ケーブルで初めて観たんだけどね。




 一応、伝奇SFとかなのかもしんないけど、そんなカテゴリーで表現できる映画じゃない。登場人物のキャラのすっ飛びようといい(誰が芝居をつけたんだという大根芝居といい)、筋立ての突拍子の無さといい、その運びの脈絡の無さといい、空前絶後。
 しみじみと地道につまらん映画作るのが得意な邦画が、ここまで突き抜けたものを作るのも珍しい。つまるとかつまんないとかで語れる映画じゃねえよ。ともかく、すげえんだ。

 ソープ嬢が愛犬殺された恨みで、相手の男殺そうと包丁を手につけねらうってのも、はあ?だし、それもジョギングウェア一式に身を包み、「走って」つけねらわれても、ちょっとちょっとちょっとー!だし、その彼女と突然現れちゃあ意味不明なこと言って去る男(隆大介)とのからみがどうにもわからんで、あんた誰?とか言いたくなるし(いや、前世の因縁なんだけどね)、その前世に前触れも無しに出て来られちゃ、食ってた饅頭がころりと手から落ちる思いだしさ。そいで、その後、何で、その「前世絡みの男」が宇宙に行かないかんのか。そいで、その宇宙船がさあ……ああ、言葉がひもじいっ。
 あのね、某雑誌でね、10人の評論家がオールタイム・トンデモ映画選んでて、その内7人が1位に上げちゃったって言えば、わかる? わからんか。ああ、畜生。
 あの凄さを、あの間抜けさを、あのどうしようもなさをどう表現すればいいの?! 神様、私に言葉をください!

 いや、これだけなら、どこの高校の文化祭出展作品かって話だけどさ、何が一番すげえかってえと、これって東宝50周年記念作品でして、あんた面子がすげえわけよ。
 プロ中のプロが携わった作品なんだよ、恐ろしいことに。
 監督が橋本忍。あの「七人の侍」書いた脚本家、構成の鬼、その鬼が自分で脚本書いてこれだよ。製作には野村芳太郎もいるのよ、撮影には斎藤孝雄も居るのよ、ええ、影武者の撮監。おまけに美術なんか村木与四郎だよ。東宝だし、要するに黒澤組だよ。だもんで、その唐突で意味不明な「前世」の戦国時代、美術とか衣装とかが無意味にしっかりしてるんだよーっ!!!!!(思い出して泣き笑い)
 ……なあ、こんだけのスタッフが居てさあ、誰か一人くらい、ラッシュ見ながら、「……ちょっとこれやばくない? 止めない、これ」と言い出さなかったのか? とどまるのも勇気だろう、違うのか? 前作の神田大尉の霊でも取り憑いてたのか?
 まあ、ここまで来て特技監督が中野昭慶、「ちゅどーん!」の昭ちゃんってのは、一種ダメ押しなんだけどね(私は個人的には「夕陽の淳ちゃん」が好きだけど、昭ちゃんも好きぃ♪)。

 んで、場面の順番から行くと、「村木与四郎」からstraight to Hellならぬ「昭ちゃん」なんだよ、わかるでしょ、その目眩く落差。黒澤の戦国風景(ってほど絢爛ではない。金が無かったのだろう)から70年代ゴジラの宇宙船*1へのデス・ジャンプ……この墜ちて行く感覚はヘロイン、コカイン一気打ち、あのスピードボールのそれか。

 百聞は一見にしかず、お近くのレンタル屋になければ、是非、リクエストしてみよう。そして、あの「衝撃の(=腰砕け、つうか、腰骨粉砕、あるいは?の乱舞)ラスト」をあなたのその目で見てみて欲しい。あなたは粛然として襟を正し、日本映画の底力を知るであろう。
 エメリッヒとか弄って遊んでる場合じゃないと思うであろう。本物の映画人が本気でこけたら、どーゆーことになるか、この映画はそんな、前のめりに倒れて映画の神様に轢き殺された人々の記録である。


*1 いや、どっちも東宝なんだという当たり前のことなんだが、ゴジラもおらず日本も沈没せず火薬もないとこで、あの昭ちゃんに何させようって思ったんだ。
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by acoyo | 2005-01-13 12:13 | 映画・ドラマ | Trackback(2) | Comments(11)
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Tracked from (笑)の研究Blog at 2005-01-31 00:04
タイトル : 憎みきれないろくでなし
お待たせしました(待ってないですか)。「幻の湖」原作(橋本忍著)読了です。以前書いたように、基本的に映画まんま。我々の疑問にはそれ程答えてくれないサブテキストでござんしたね。まずは以下に、映画に描かれなかった情報を挙げておきましょう。 ... more
Tracked from だまされて大阪 at 2005-02-22 03:07
タイトル : 幻の湖(1982 日)
監督・原作・脚本:橋本忍 出演:南條玲子    隆大介    星野知子    光田昌弘    かたせ梨乃 …ほかホンマ沢山 まさかこの映画がDVDになっていようとは…東宝もイイ感じで自虐的ですな! DVD発売前、既にカルト的知名度だけは抜群に高かったので今更感は漂うが、発売を知らんかったので許してつかぁさい。 私は小学生の頃、オカンとこの映画を見に行ったのだよ…映画館を出た後、親子の間には明らかに映画を観る前とは違う空気が流れていたのは本当によく覚えている…。 オカ...... more
Commented by k-nsh at 2005-01-13 14:34
これってかなり昔の映画じゃなかった?雄琴温泉とかが舞台とかで?
確か映画館で見た気がする・・・東京にいた頃だから20年位前 ただ故郷に近いところが舞台っていうのと日陰的な職業の方がライトを浴びたっていうか異色性に惹かれて見たけどわけの\(?。?")イッタイ映画やった。
Commented by night_heron at 2005-01-13 14:51
頭の中で「さよならジュピター」「HOUSE」と同じ箱に入ってました 。
猛省して、是非見ます (www。
Commented by jaguarmen_99 at 2005-01-13 16:54
TBありがとうございます。
わあ!実際に観ちゃった方がここにもっ!(´・ω・`)
この映画、ちゃんとノベライズされてるそうで、そこに脚本家のインタビューなども有るそうです。前作の八甲田山の撮影中に、雪原に「出刃包丁を持って男におそいかかる女のイメージ」が沸いたのだということでした。ところで、座布団がたくさん集まったので、野球盤か車いすと取り替えたいのですが。
Commented by KAZZ at 2005-01-13 18:35 x
いや~、おもちゃ箱のような日記ですね、ここは!
「幻の湖」ですか。作品は見ていないけどシナリオは読みました(爆
ちなみに主演の南条玲子にはちょっと惚れかけました(ガキの癖に・・・)。

この時期の日本映画って、Junkがイッパイで重箱の隅を突つかなくても色んなモノが出てきますよ。
個人的に(藁)系は「宇宙からのメッセージ」(深作先生!)、「ブルークリスマス」(倉本・但し富良野前)とかね。
私が高校生~予備校生の頃でした。
まだ、アイドル映画の方が鑑賞に堪えうる映画が多かったと思います。
Commented by bukabin at 2005-01-13 20:45 x
さっぱり,話が見えない分際でコメントしてあれですけど・・・。
こーゆーのが案外ハリウッドの目にとまったりするのかも(笑)
Commented by tonbori-dr at 2005-01-13 22:51
「幻の湖」かあー。しかも東宝50周年ってのが泣かせる(苦笑)
当時の風評は別のモノに興味がいってたので全然しらなかったけれどこれはまごうことなき「トンデモ」映画でした。
これとタメ張れるのは「北京原人」くらい?いや「さよならジュピター」とかもあるけれど(爆笑)ちなみに「シベ超」は観ていないので果たしてコレと張れるのかなあ?すごく気になってきた(^^;
Commented by yaling at 2005-01-14 11:27
これは間違いなく確信犯だ!東宝が50周年記念作品としてこの世に送り出した時点で確信犯なんだと思うぞ。「ジェファーソン・エアプレイン」か、はたまた「不思議の国のアリス」か、和製ドラッグカルチャー目指してたものの、所詮なんちゃってだったのか、㌧でいったようで飛びきれずにこんな㌧デモない映画になっちゃんだと。だってこれだけのメンツが揃っているにも関わらず、こんなことになること事態がありえない!

キネ旬データーベースよりストーリー紹介、「トルコ嬢の道子は…」
トルコ嬢って…。懐かしい響きだわ。高校生だったころ太融時あたりにあったトルコ風呂(そん時の呼び名はすでにソープだったけど)が全部なくなったあと、カラオケボックスになったんだけど、改築費をケチったのか内装がタイル張りでまんまトルコ風呂でポッとなったのを思い出した。純だったあの頃…
Commented by acoyo at 2005-01-14 12:32
>K-nshさん
映画館で観たのか……かわいそうに。撮影監督がうまいもんで、雄琴の風景もまたきちんとしてたんだよねえ。何だったんだ、あれは。

>night_heronさん
あなたらしくもない不見識(藁)。是非、見返してみてくださいませ。

>jaquarmen_99さん
何で、そのアイディアを雪の中に捨てて来なかったのか。え、座布団10枚で芸者遊びってんじゃなかったの? うちの母はそう言っておりましたが。そうかあ……肩たたき券とかじゃ、だめ?
Commented by acoyo at 2005-01-14 12:33
>KAZZさん
おもちゃ箱といいますか、夢の島といいますか(藁)。とあれ、光栄でございます。いや、「幻~」はね、「宇宙からのメッセージ」とか、そういうレベルではございません。なんつうか、「深い」んです(藁)。コケ方が尋常でなく、「深い」。

>bukabinさん
一度、見てみ。あなたの中の何かが変わるで。あんなもん、ハリウッドの手に負えるもんじゃねえ。

>tonbori-drさん
そうなんです。ダメな映画とかこけた映画とかじゃない。「とんでもない」映画。人をして脱力せしむる映画。「シベ超」は確かに抱腹絶倒ですが、単に素人の作品ですんで、やはり、格が違うかと(WOWOWで特集してたんで見たの、わざわざ見に行ったんじゃないの)。

>yalingさん
……確信犯なら救いがあるかと思います。ですが、そのあり得ない事態があり得たというあたりが、映画の奇跡といいますか、映画の神様の逆鱗ってあるんだなあといいますか。いやあ、映画って奥深いものですね。
太融寺には今でもhookerさんがいらっしゃるそうで。梅田のダークサイドざんすな。
Commented by 西中島・南方 at 2005-01-31 00:08 x
この映画は決して「駄作」ではないと確信し、ついうっかり原作本を買ってしまったことがあるので、トラックバックさせていただきました。入手したのは第5刷、ってことは当時、結構売れたんですかねー?
Commented by sangatsu54 at 2005-02-22 03:09
最近DVD化を初めて知りトラックバックさせて頂きました。
時流がずれまくりで申し訳ございません。