湾岸署は箱庭の中にある。

踊るブロガー伝説
「交渉人 真下正義」これって、どうなん?

 tonbori-drさんとmori2さんのとこからです。

 これは、街頭で宣伝を見た瞬間から、「あー、またかい」というのが、正直なところ。でも、周囲の人は結構熱心にテロップ見てましたなあ。

 mori2さんがおっしゃるように、映画は二本とも二時間枠とどう違う?という話だった。ストーリーの点では、稲垣が出てた二時間枠の方が見応えがあったくらいで、制作側の限界というのがはっきり見えた作品だったと思う。
 んで、今回のスピンオフは、「織田が逃げた」からやってるんでしょ。何をどう言われようと、苦肉の策、という感じしかしないんだよなあ。どうしても。




 まあね、私は、長年地上波のTV見なかったのが、たまたま「踊る~」を見て、あ、日本のTVもまだ棄てたもんじゃない、若い才能は伸びてるんだと嬉しくなった。だから、あの作品にも結構思い入れは深い。
 でも、TVシリーズ自体、ファンになってずんとはまりこみ安い作品であるのと同様、手放しで賞賛できるものではなかったのも事実で。まず、これは周知の事実として、「パトレイバー」の強い影響というのがあるわな。ネタがどうこういう前に、あれは埋め立て地の特車二課からレイバーを抜いて、日常に話を絞って展開させた、というモノですから。
(その「日常」って何よってのを、面倒臭く言うなら、「うるせい奴ら」から始まって「パトレイバー」で完成した、押井-伊藤の《箱庭or子供の秘密基地》から世界を冷静に見る視点、とでも)
 それは君塚の台詞回しにも随所に見られ、ザ・ムーヴィの小泉今日子の台詞なんてもろ、押井-伊藤ラインですがな。だから、浮いてたんだけどね、映画の中で。君塚があの世界で「輻輳する現代社会の中でのある種の真実」的展開でシリアス気取ろうとすると、彼自身にそういう手持ちがないもんで、ぐいとネタ元に引き摺られるんだなあというあたり、つい笑ってしまったが。
 全体には、ER、ホミサイドを始めとした90年代アメリカのプロフェッショナル・ドラマから、かなり「学習」しているなあという感じだった。ただ、そのコメディ部分を前に出したということで、向こうのプロフェッショナル・ドラマの強い持ち味だった「身も蓋もない現実性」(これは押井-伊藤にしてもそうなんですけどね)がぐーんと後ろに引いて、キャラクターの華に頼る傾向があった。つうか後半は主にそれに頼りっぱなしになってきてた。
 
 それはフジのドラマという制約以上に、その制約下で描くことに慣れちゃった制作陣の問題ではないか、という気がした。だから、映画がああなったわけでね。

 つまり小器用にまとまっていて、手堅くツボをついてくる。でも、映画になるってことは、単に画面が大きくなるだけじゃなくて、ハコが大きくなる分、「物語」も大きくなる。その時に、小器用さというのは器用貧乏になるんだよ。
 この器用貧乏さってのは、前から考えてる、「オタク対応」、「予め予想される観客のみにむかって出力する日本のメディア作品」ってことにもつながるんだけどね。
 あえていうなら、対オタク向けのように誤解されてる「パトレイバー」シリーズの方が、実は大きな話を圧縮してシリーズ化していた。だから、映画版で本来の大きさに戻って弾けたわけですが、「踊る~」は小さなモノを拡大して大きくしようとした、その差だと思うんですわ。

 それはどういうことかと言えば、箱庭性が加速するってことで、つまり、湾岸署はどんどん閉じていくんですよ、ファンにとって、人事異動があろうがなかろうが。
 そして、そこから何か得て出ていく場所でなく、そこに閉じ籠もる場所になる。おたくの揺籃となる。もっともこれはヒットしたドラマがカルト化する際の必須事項なんでね、ツボついたってのはその点。
 ですが、それはドラマから躍動性と「弾ける力」を奪うんですわ。

 例えば、欧米のTVヒット作を映画化する場合、製作陣は変わる。それは撮るモノの大きさによって撮る人の手の大きさももう決まっちゃうって問題があるからだ。勿論、主演陣も変わることが多い。だって、TV俳優と映画俳優にかなりの格差あるし、何より、「同じモノ見てもつまらんでしょ?」って発想があるからなんじゃないかなあ。

 けど、日本の人は、どうも「同じモノ」「馴染んだモノ」が観たいんですね。箱庭が好きなんだな。そして、その箱庭から外を見るということさえ忘れて、その箱庭しか見なくなる。
(しつこいようだけど、押井が凡百のアニメ監督と違うのは、彼はいつもその箱庭から外の世界を凝視しているってことなんですけどね)

 んで、私は君塚という人にはまだかなり期待してるんで、一度、その小器用さ、捨てたらどうだにと思う。さしあたって、「踊る~」辞めたらってこと。あんたも嫌だろ、正直なとこ。原案で逃げてるようだし。箱庭から出たいんだろって。
 まあ、一度ヒットすると、潮時考えず、受け手が飽きるまで同じパターンでそれやり続けるというのが、日本のメディアの悪い癖で(最近はハリウッドもそうだけどさ)、そうして、いいネタもよってたかって潰されていく。消費されてくんです。いつものことなんでわざわざ指摘するまでもないし、今回は、それを惜しむほどの愛着もないから、いいけど。

 ただ、実際に相当いれこんでた人ってのは、惜しまないのかね、それを。それがちょっと不思議。少なくとも、織田は「惜しんだ」から逃げたんだろうしさ。その判断で、私はちょっと彼を見直したくらいで。
 それでも、義理と人情で引っ張って来られる可能性はあるけど。

 個人的には、役者としてのユースケ・サンタマリアは、織田や柳葉より才能があるし、主役を張るという点では期待してるけど。ただ、織田にあったスター性っていうのがなあ(好むと好まざるとに関わらず、あのドラマの中で目を惹いた、話を引っ張ったって点で)。あれが「踊る~」の心臓部だったわけで、それ抜きでの「スピンオフ」となると、ある意味では思い切った冒険もできるし面白いこともできる。だからこそ、製作側の底力が試されるんだけど、そういう自覚はないだろうな、きっと(藁)。
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by acoyo | 2005-02-10 12:33 | 映画・ドラマ | Trackback(1) | Comments(10)
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Tracked from web-tonbori堂.. at 2005-05-21 00:58
タイトル : 「交渉人真下正義」のネタ
以前のエントリで書いたのだが結構皆さんパトレイバーの関連性を書いている人が多いようで。 しかも事細かに列記している方もいらっしゃる。 でもあれだけあからさまにやってると皆気が付くよな。やっぱり。 本広監督のアニメ好き、押井好きは言うに及ばず「踊る」のメインライター君塚氏の「パトレイバーを意識している。」発言からでもそれは周知の事実ではあったしそれを指摘している人はたくさんいる。 それ以外にも「ジャガーノート」や映画、音楽、小説(しかも別にコレを使う必要がないと思う)などのネタを消費...... more
Commented by syun0823 at 2005-02-10 15:03
ごんにちは。韓国からの「踊る」ファンですけど,このポストをトラックバックしたいです。
承諾してくださいませんか。お願いです。ご返事をお待ちしております。
Commented by acoyo at 2005-02-10 15:20
どうぞ、お使いくださいませ。
あのね、ひとつひとつ、承諾は取らないでもいいんですよ。ただ、「しましたよ」って連絡をくださると、私はとても嬉しいです。他の方も同じだと思います。
Commented by jaguarmen_99 at 2005-02-10 19:26
寅さんも釣りバカも箱庭なんだけど、あれは節目に予定調和を楽しみたいということなんでしょうかね〜…。
Commented by tonbori-dr at 2005-02-10 21:24
TBありがとうッス。箱庭というのはそのとおりですよね(^^)
あと「パトレイバー」の影響とか。
ドラマ放映当時相当気張っているなと私も思っていました。
映画の1作目で留めておけば綺麗に終われたと思うんだけどなあ
Commented by forest-sea at 2005-02-10 21:38
逃げたくせに、ギバ主役にイチャモンつける織田の了見の狭さが、まことに日本っぽく面白い。でも、ユースケって花がないんだよなあ。
はやく「2」が地上波で流れないかなあ。まだ、見てないのだよ。
Commented by belltone at 2005-02-10 23:12
僕も役者としてのユースケは好きですね。才能もあると思いますし、
彼が主役だと、物語を面白くしないと、ほんとに面白くなくなりそうなところもいい。日本人は、箱庭を違う角度から見るのも好きですしね。違う角度から見ても箱庭の構築物は同じ、というのもあるんですが。
織田は、歌ってるときにスター性を感じますね。あの「サブさ」はなかなか出せるもんじゃないと(笑)
Commented by mori2fm at 2005-02-11 01:32
トラバありがとうございました。
>埋め立て地の特車二課からレイバーを抜いて、日常に話を絞って展開させた…素晴しい分析ですね。「踊る…」の世界観を的確に言い当てておられる。海が近くに無い“京都”在住の吾輩には、埋立地っていうのは中々実感の湧かない世界でござります。
Commented by acoyo at 2005-02-11 14:18
>jaguarmen_99さん
やはり、節目節目に見慣れたものを見て、大和の国、単一民族、同じ思考ってのの永続性を寿ぎたいのではないでしょうか。いや、寅さんは好きなのよ。

>tonbori-drさん
引っ張るだけの力があるかどうかの見極めも、作り手に大事なとこだし、実際、それがまずプロデューサーの判断だと思うんです。それがどうもねえ……。

>forest-seaさん
あ、いちゃもんつけてましたか、あいつ。見直してやったのにぃ。ユースケはねえ、花がないんじゃないの。どうも、可憐な野に咲く名もない花なの。

>belltoneさん
箱庭自体は私も好きだし、日本人の得意技だと思うんですね。ただ、1個の箱庭に籠もりたがる傾向があって。箱庭なんて作って壊してまた作るものだろうと思うんですが。
織田のスター性は、スマップと歌ってるのみて痛感しました。いえ、どっちも華とオーラだけで歌ってるのが、天晴れというか(それでも織田より下手だったスマップって……)
Commented by acoyo at 2005-02-11 14:19
>mori2fmさん
わざわざおこしいただきありがとうございます。お褒めにあずかり恐縮です。
埋め立て地は近所にはないですけど、海が近いんで見慣れた風景ではありますね。あれはできかけが楽しいです。ただの原っぱですから。
Commented by tonbori-dr at 2005-05-21 00:58
えーと「交渉人」関係でTBいただきましたあ(^^)