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腐海は続くよどこまでも。

私の家族

 敬愛する作家のシャーリィ・ジャクソンは、「我が家の生産物は子供と本であって、どちらも大量に生産されている」と言った。
 我が家は、子供始め、何かを生産するような甲斐性はないが、本の類は大量にある。だけでなく、CDにDVD、プラモに海洋堂フィギアに籐籠の類と〈お好きな方にはたまらないかと〉風アイテムも日々増殖を続けている。「どうでもいいモノ」は多い、異様に多い(今、見てみたら、どうしてだかUSBコードまで束であった。何故?)。
 そして、子供がいないのをいいことに、私たちはそれぞれの作業用個室を持っている。記事をトラックバックさせてもらったnikonikomikkiさんにしても、夫に負けずに〈どうでもいいモノ持ち〉で、やはり自分の部屋を持っている。それを私は知っている。
 そうして、私たちは、それぞれ、日々仲良くのんきに暮らしているのだが、その〈どうでもいいモノ〉に対する接し方となると、いきなり、波乱が生じる。私と彼女VS私たちの夫という構図ができあがる。
 
 私と彼女は「ファイリング魔」という種族に属するのだろう。趣味のモノだろうが必要なモノだろうが、手持ちのモノは何でも大分類>中分類>小分類とファイル分けし、ラベリングし、定期的に「捨てる技術」を発動して内容を更新し……と、「きちんと管理」しないと生理的に気持ち悪い。文房具や通販のカタログは最新版を揃え、薬箪笥とか図書館の索引カード用キャビネットとか、オフィスの最新型ファイリング・キャビネットなんか見てると、欲しくて欲しくて血が騒ぐ(〈フレンズ〉をご覧の方、あのモニカを思い起こしてください)。
 つまり、メモ一つでさえ、必ずざっと内容別にクリップで留めて〈仮収納用〉クリアフォルダーに入れておき、しかるべき後、正規の分類別フォルダーファイルにおさめてブックファイルに並べておく。そうしないと、落ち着かないんだから仕方ないじゃないの!

(ただし、この「ファイリング命」と「綺麗好き」「掃除好き」はまた両立しない。普段、とっちらかってるのは平気だい。それがいざとなれば、「びっしー」と片づけられるだけの、「モノ」の分類把握と置き場の確保ができてるかどうかが問題なだけだ)

 でもって、お互いの夫は、言うまでもなく「出したら出しっぱなし、散らかしまくり」系「僕にはどこにあるかわかってるもん」族である。彼女が放った名言がある。
「あいつの部屋のモノが、あいつの腐海が、廊下を越えて私の清浄な森を浸食しにくる!」

 だが、ナウシカならぬ彼女がどんなに手を広げて立ちはだかろうとも、彼女の愛する夫(いい人なんです、ごめんなさい)の「モノ」の大群はその体をも乗り越えてリビングへと広がり、美しく整頓された家族の共有空間を浸食してゆくであろう。
 nikonikomikkiよ、大丈夫だ、整理整頓に殉じた友の骨は必ず拾ってやる。

 で、私は掃除機かけるのが嫌いだ。ずるずる引っ張っらないといけなくて、そうしている間も必ず何かにぶつかってひっかかる掃除機という代物が大嫌いで、意地のように箒を使っている。同居人にして夫の方はそれが平気で、彼としてはわりとこまめにかける。そして、私を無精だと誹る。
 ほお。そうかい。そう言うかい。
 だがな、私が掃除するときは、そりゃ徹底してやるぜ。床だけでなく、壁から窓から壁の額縁から猫の置物まであらゆる場所とモノを拭きまくり、棚の上を指でなすったって埃一つつかないとこまでやるぜ。モノは全部「おさまるべきところ」におさまり、床には塵一つ落ちてまへんがな。そんで、あんたの掃除って何?
「部屋に転がってるモノを、壁沿いに蟻塚みたいに積み上げて、空いた隙間に掃除機かけるだけじゃないのさ。いいか? その蟻塚がいつか崩れて腐海が生まれるんだよっ」
「……俺はオームか? 触覚があって光るんか?」
「おうよ、私はトルメキヤのクシャナだよ。(ドモン・カッシュ風に)出ろーっ! 巨人兵!

 ……蟻塚と腐海。ますますイメージは未開であり、混沌である。カオスかあ……ファイリング魔なんて小うるさい総務課長の感じだが、そっちはなんか文化人類学的でかっちょええでやんの、ちぇっ。
by acoyo | 2004-09-08 17:52 | 愚者の休日 | Trackback | Comments(2)
Commented by niko2mikki at 2004-09-09 10:19 x
近頃は、腐海の胞子は娘の部屋からも飛んでくる。
彼女の腐海は凄まじい・・・。
一日かけて焼き払っても、(掃除する)10分で元の腐海にもどります。
うちではこれを「瞬間芸。綺麗なお部屋」といってます。
Commented by acoyo at 2004-09-09 12:37
それって瞬間芸じゃないよ、きっと。
あなたたち親娘は、一瞬、舞い上がる胞子の中で、幻影を見たんだよ、風の谷の。