今はこんなだから、この映画を思い出す。「子供たちをよろしく」

キネ旬データベース →*1

 あの事件からいろいろ考えてて……また重い話です。
 
もう20年以上前の映画になる。覚えている人も少ないだろう。
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 メアリ・エレン・マークという私の好きな写真家が撮った写真集から始まった企画で、ご主人の映画監督が撮ったドキュメンタリー。シアトルのストリートチルドレン(向こうでは原題のようにstreetwise 路上で賢くなった人、という表現をするようだ)を丹念に撮ったものだ。

 子供たちは13歳から19歳、みんな親から逃げて来ている。廃屋に居座り、売春をしたり、物乞いをしたり、子供たちはそれなりに生活している。子供らしく明るい話もあるし、笑える場面もある。それを非常に抑制されたカメラが、感情に流れることなくとらえている。パンフレットで川本三郎が書いているように、「カメラは自分たちの価値観を彼らの中に持ち込むことをあらかじめ禁欲し、ただ彼らの生活を観察し、言葉を記録することに集中する。(中略)いい意味で無表情(デッド・パン)なドキュメンタリーにしている」

 私は友人と二人、リバイバルの限定上映で観に行った。映画が終わり、トム・ウェイツの歌が終わり、場内が明るくなり、みんな出ていっても、私たちはしばらく動けなかった。そして、会場を出て、難波から梅田まで黙りっ通しで歩いた。泣く気にさえならなかった。

 それからしばらくして、地方で映画の上映会をしている人と知り合った。その時、「地味でもいい映画ってない?」と聞かれ、私はこの映画を推薦した。
 その人は、「ううん」と呟いた。「そういうのお客が来ないんだ。地方の人は、フランス映画みたいにお洒落なのでないとねえ」と言った。
 その人は、営利目的で上映会をしているのではなかった。地方にいると観られない映画があるから、まず自分が観るためにやってるんだと言っていた。私も、じゃ、あなたがこれを観たくないのね?とは訊かなかった。

 写真は、友人にもらったこの映画のチラシ。メアリ・エレン・マークの同名の写真集のカヴァーにもなっているから、洋書屋で見かけた人もいるかもしれない。
 私はその写真集を買ってからずっと、表紙を見せて書棚においてある。映っているのは14歳のタイニー、娼婦である。映画の終わり近く、この子は17歳のBF兼ヒモのラットと別れる。そして、映画は別の少年の自殺の話になり、最後にこの女の子が一人、また街を歩いてゆく場面で終わる。
 私は、この少女の顔を何年も見て来た。この子はどうなっただろうかと思うのも忘れる程に。この色褪せた写真は今も、本棚から私を見返している。
 彼女は人の憐れみを拒否するかのように肩を尖らせ、すっと背筋を伸ばして歩いていった。その痩せた背中に、ほんの幽かなものであっても救いや希望が見えた気がしたのは言い訳だろうか。

  ……四の五の言う前に、ともかく観てもらいたいと思うんだけど、今は難しいようだ。大きなレンタルビデオ屋さんなら、まだビデオが残ってるかもしれない。DVDは出てないみたい。写真集はあると思うので、気になる人は探してみてください(アマゾンは品切れでした)。
 
*1他になかったので、このサイトを紹介したが、解説のラスト、「街暮らしの不安と魅力をレポートしている」が気になってしかたない。ほんとうにこの映画を観たのかと思う。
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by acoyo | 2004-09-17 19:00 | 映画・ドラマ | Trackback | Comments(5)
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Commented by romeron at 2004-09-18 14:10
とても気になります。今度探してみますです。
どうでもいい映画のDVDはごまんと出てるのになー。
「リーベンクイズ」のDVDも出ないし。
Commented by acoyo at 2004-09-18 15:52
「リーベンクイズ」、あれ、私も探してるんですよ。ものぐさなもんで、公開時はよく見逃すから。日本はドキュメントに冷たすぎます。スターウォーズ何回も出すくらいなら、何とかしてくれ。
Commented by streetwise at 2004-09-29 19:29
はじめまして。streetwiseと申します。
そのまんまですが、この映画からとったものです。
検索した所、こちらのページがHitしたので、来てみたのですが、
こんなに詳しく解説されていて、びっくりしました^^;
写真集の存在も忘れていました…。
DVD…Videoでもいいから欲しいですけど、まずないですよね。
写真集探してみます^^
Commented by acoyo at 2004-09-29 19:54
はじめまして。この映画知ってる方がいて、とっっても嬉しいです。
写真集、見つかるといいですね。一時は日本版も出てたような~。
そちらにもまたお邪魔させていただきます。こんなとこですけど、よければまたお越しください。
Commented by かっぽれ at 2012-08-19 05:25 x
懐かしい…私、この映画を、『観るべきドキュメンタリー映画No.1』に挙げていたのですが、しばらくはVHSも出てなかったように記憶しています。 確かラリー クラークの『KIDS』と一緒のタイミングで、やっとVHSが出たような…DVDが出ると良いですね!!