老人と「ラスト・サムライ」

映画館の非常に不幸な状況

 私が最近よく行くのは、二駅先のシネ・ピピア
 小さいけど、座席はシネコン並でとっても快適。待合い喫茶の名前がバクダット・カフェ(だったと思う)なのはかなり恥ずかしいけど、まあ……仕方ない。地元の人が一生懸命やってる映画館で、アート系、メジャー系ごっちゃで遅れてやってくれるし、時々、企画物のリバイバルもあるしんで、名画座もない今、ものぐさ故に見逃しが多い私には便利。

 んで、夏前に「ラスト・サムライ」に行ったです。母と一緒に、「母と子の映画教室」第○回で(実家の恒例行事)。映画はよかったんだけど、今日は映画の話じゃないの。

 説明が遅れたが、このシネ・ピピアはそういう地元密着型なもんで、第1回上映のときなどご近所のご老人が連れだって集まられる。何、年寄りは朝が早いし、老人優待もあるし、暇だから。公立病院で集会をなさるよりはずっといいと思うし、一緒に映画をごらんになる老夫婦はわりと上品な方が多い。小津週間の時など、画面を見ても客席を見てもお品がよく、どちらもとても天国に近い感じで心和んだ(おいおい)。
 
 その日も、足腰がおつらそうな老婦人が一人でお見えになっていた。バイトの嬢ちゃんが私たちの座ってる列の右端まで連れて行ってあげていて、ふむふむ、ええ心がけじゃ、早くお嫁に行きなさいとか思っていた。
 そして、時間は過ぎ、映画は佳境にさしかかり、トム=《正直に言えば怒らん、整形だろ、その顔》=クルーズの回りをぐるりと政府軍が取り囲み、場内は固唾を呑んだですよ。
 その時、一際高く

「あらあ! 死なはったん?!」

 さっきのばあちゃんだった。場内は一瞬、氷のように固まった。そこへ追い打ちをかけるように、
 
「なあなあ、この人、死なはんのん?!」
 
 ……フツー、ここで爆笑とか怒りのざわめきが起こりかねないところだが、何せ、来ているのは似たようなお年頃の方が多かったので、明日は我が身と思ったのだろう、皆、しばしの動揺の後、「無かったことー」になさった。さすがこのあたりはお土地柄が穏やかでいらっしゃる(阪神圏の田舎だし)。
 
 私も、これをよそでやられてたら、無言で毘沙門剣の一閃をかけるとこだが、老眼鏡の奥の目をまんまるにしているばあちゃんを見ていると、束を握った手も緩んだ。
 ……そーだね、ばあちゃん、知りたかったんだね、映画にのめりこんじゃってどきどきして、驚いちゃったんだね、ばあちゃん、ばあちゃん、好きなだけ生きてくれ……そう思い、嘆息をついて映画へ戻った。
 私って、大人~と思った。母も後でそう言ってくれた。
 
 それを話すと、同居人は、いい話だに、けど、やっぱ、あそこで「イノセント」だけは観ないでよかったに、と言った。来週は、また母と子の映画教室で「カレンダーガール」に行くです(今日は「バイオハザードⅡ」観にシネコンへ同居人と行くです)。
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by acoyo | 2004-09-18 10:53 | 映画・ドラマ | Trackback | Comments(2)
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Commented by past_light at 2004-09-18 18:46
>「あらあ! 死なはったん?!」
という言葉、なるほど人生長生きしないと出てこない。
しかしカンサイだと気持ちよいフレーズに聴こえるけど(笑)。
「あれ、死んだの?!」じゃ、のちのち氷の微笑にしかならないか。
Trackbackありがとうございました。
Commented by acoyo at 2004-09-18 20:16
関西弁は便利です。