私は食べたい、「フェリーニのパスタ」

 何が一番、食べたいって、そりゃパスタ。ううん、ただのパスタじゃないの。
 「フェリーニのローマ」で、ご家族が近所のリストランテに行って、夕方から夜中までなっがーい時間かけて、延々食べ続けてたあのパスタ。
(観てない人は、「ゴッドファーザー」の冒頭、結婚式の場面でのご会食が、もっと地道にもっと貧乏臭く、ただし夜中続くものと思ってください)
 今でこそ、どんと鉢で来るスタイルも増えたけど、あれをビデオで観た頃は、名の通ったイタ飯屋でも、こちんまり皿に盛るのが一般だった。あれを観て、私は、そーか、パスタっつうのは取り分け料理なんだと膝を打った。どかーんと大盛りして、はい好きなだけ食べてねってやつ。あれが本当のイタ飯だ、そう思った。

 (ここからは曖昧な記憶に頼って書いてます、「アマルコルド」あたりと混同してるかも)「フェリーニのローマ」はドキュメンタリー・タッチのオムニバス形式になっている。この「街角の晩ご飯」はその一挿話だった。
 まず、カメラはローマの裏町の一角、生活の匂いがぷんぷんたちこめる界隈をとらえる。その日灯し頃、近所のおじちゃん、おばちゃん、おじいちゃん、おばあちゃん、嫁さんにガキがぞろぞろ集まってくる。
 彼らはどっかと外に出してある木椅子に座り込み、食べる食べる食べる、頓死しないかと思うくらい食べる。ワインも飲む飲む飲む、煙草も吸う吸う。そんでもって喋る喋る喋る。ガキはもう飽きちゃって、テーブル離れてそこらで遊んでる。それでもおばちゃんたちはなお食べる飲む吸う喋る……のエンドレスループ。
 もしかして、朝まで食べ続ける気か? 君は食うのかそんなにしてまで。
 ……私は、昔、ローマの貴族は一晩がかりで宴会をやり、満腹になると奴隷に鳥の羽を持って来させて喉の奥をくすぐり、いとも上品に吐いてはまた食べ始めたという逸話に重いリアリティを感じた。それはともかく、正直、傑作と言われる「甘い生活」より、私は遙かにこっちに、豊潤な生を、圧倒的なドルチェ・ヴィタを見た。根がゲージツテキではないからかもしれないけれど。
 今でも思い出すたびに生唾が込み上げ、胃がきゅうと鳴る。矢野顕子じゃないけど「パスタ食べたい 今すぐ食べたい」になる。んで、♪~私は私のパスタを食べる、責任もって食べる♪と歌ったところで、口の中の唾が引っ込んで胃が黙るわけじゃない。
 近所に2件、梅田に1件、これだというイタ飯屋もある(近所の内1件は、リーズナブルな値段のわりに、シチリア料理の草分けとして全国区の有名店、最近サービスひどいけど)。
 でもね、ダメなの。
 ローマ、下町、リストランテ(レストランじゃない)、路上に置かれた貧相な木のテーブルセット、安そうな白いクロス、生活感に充ち満ちたおっちゃんとおばちゃん、走り回るガキ、とんでもない大きさの安物の鉢、街の夜の薄い闇……これがぜーんぶセットじゃないと、あのパスタじゃないのよーっ! ……かくして、私の飢えは満たされない。JTBに電話して「今すぐローマまでの直行便ね!」と言えるほど金も無い。

 仕方ない、サンマ買って来て、シメジの炊き込みご飯でも作るか。ほわりと湯気を上げるご飯、脂ののった旬の魚の塩焼き、大根おろしにおみそ汁、漬け物。「淡泊・質素・パステル調の日本食」(「笑う大天使」川原泉)。当面は、「原色・華麗・極彩色」()の西洋に目を背け、自らの固有文化に逃げ込んで、まず腹に妥協させておこう。
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by acoyo | 2004-09-23 17:13 | 映画・ドラマ | Trackback | Comments(8)
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Commented by こぎつねはこんとなく at 2004-09-23 17:31 x
食文化のあるところ文化あり。
イタリア料理は種類が多くておいしい
中国料理も種類が多くてどれもおいしい
インド料理も種類がおおくてどれも辛いけどおいしい
だから国の文化もそれぞれに豊かで魅力的!。
でもアメリカの野郎の料理は死ぬほどまずい。
こんな国が世界でもっとも影響力があっていいのか?
皆さん、あいつらの舌は馬鹿です、文化ありません
ほっといていいのでしょうか。
すみません個人的な恨み70%で書いてしまいました
Commented by Kyoto-Eco at 2004-09-24 00:23 x
個人的な恨み70%...ちょっと共感。(笑)
ゼイニーバニラアイスはペンキの味がお気に入りなんですけど、
私もあの国で食べられるものは殆ど無いと思います!
唯一、チリソースどっぱりのホットドッグだけはいけるかも?
薄々のコーヒーにチリビーンズにとうもろこしパン、ナイフで削いで食べる
段ボール紙の様なビーフフジャーキーは、食文化と言えるかも知れません。
イタリアの、『ものを食べる』で映画になってしまう奥深さには、常々脱帽。F.フェリーニもそうですが、ルチオ.フルチなんかカニバリズムが
極上グルメ映画になっていたりします。(奥深過ぎ;)
Commented by redchili3 at 2004-09-24 03:20
フェリーニですか。
「ローマ」は見た事ないですが、是非見てみたい。
料理、食の文化が発達している国には、行ってみたくなるものですね。
イタリア、フランス、ドイツ、スペイン、中国。
そこには、極上の料理とお酒が・・・

その意味で、やはりあの超大国にはあまり興味が湧きません。
ハンバーガーとコーラだけのイメージが。
それを言ったら、日本も生魚(寿司など)とか、みそ汁だけのイメージで見られているのかなあ。

リンクありがとうございます。
僕もはらせていただきました。
Commented by acoyo at 2004-09-24 03:32
>こぎつねはこんとなくさん
 リンチもアメリカ文化ですが、いいんすか?

>Kyoto-Ecoさん
 メールに打ちました(藁)。

>redchili3さん
ご丁寧にどうも、こういう下世話なサイトですが、たまには来てやってください、あのね、日本人のあれはね、沢庵みたいです。野菜の腐った臭い呼ばわりされるそうです。後、アメリカではご飯炊いても顰蹙買うみたいですね、あの匂いがいやなんですって。
Commented by past_light at 2004-09-24 18:02
フェリーニといえば、男のぼくにとっては、中年スナポラッツの夢見る巨大なオッパイの女なんです・・意味不明か(笑)。
Commented by acoyo at 2004-09-25 02:44
フェリーニといえば、女のわたしには「飛ぶ十字架」(キリストだっけ?)と「輪になって踊ろ」と「マストロヤンニの鞭ばしばし」です。意味不明か(笑)。
Commented by redchili3 at 2004-09-25 04:03
少年スナポラッツの夢見る巨大なおっぱい、分かり過ぎるくらい良く分かります(笑)past_lightさん。
Commented by acoyo at 2004-09-25 12:19
男二人が共感しあってるぅ……なんか悔しい。いいもん、私、胸はあるもん! あ……話がずれていくっ。