「素」を演じられる役者たち アクターズ・スタジオ・インタビュー

アクターズ・スタジオ・インタビュー

NHKでやっているロング・インタビュー番組です。今ではCSで再放送も始まってます。
ジェームズ・ディーンやマーロン・ブランド、ポール・ニューマンといった数々の名優たちが演技を磨いたアクターズ・スタジオ。その主要メンバーのひとりで現在ニューヨークの大学でそのノウハウを教えるジェームズ・リプトン氏が、演技や演出を学ぶ学生たちの前で、第一線で活躍中の映画人にインタビューする名物番組。
 つう触れ込みで、最初見始めた頃は、さすがアメリカきっての演劇学校アクターズ・スタジオなだけに、ゲストもパチーノとかデ・ニーロとかポール・ニューマンとかそれ相応の面子だった。
 けど、段々、売れてるだけの人が新作プロモに来るのが増えてきたのと、元から、このJ・リプトンのインタビュー、丁寧で上品な分、単に褒めたたえるだけって風で、最近はそう熱心にも見なくなっていた。
 それをたまたま昨日、10周年記念で特番やってたんで、久しぶりに見たんだ。

 この番組、一応、キャリアを中心にその時の小話や演技のテクニックについて話すのがメインになってるんだけど、いつからかパターンができちゃってて、途中で「泣かせ」と「歌と踊り」がはいるようになってきた。
 歌と踊りはご愛敬セクションで、泣かせってのは、親の死とか離婚とか依存症経験とかで、そこで必ず、呼ばれて来た俳優さんがたがうるうるする。言わば、インタビューの山場ね。

 ほんで、これは前から思ってるんだけど、日本の素人に毛が生えたタレントさんがたは別にして、欧米の「俳優」ともなると、カメラが回ったらもうインタビューだろうが何だろうが、どこかしら「演技」してるよね。たとえ、自分に関する本当のこと話してても、「それをどう話し」「どう見せるか」つう意識が刷り込みで発動しちゃうんだよな。
 決してただの「素」じゃない。あれはどこかに演技と計算が入ってる。つうか、「素」を演じてる。

 そいで一つ誤解して欲しくないのは、よく言われるスターの○○が「スターの○○」ってキャラの仮面被って云々じゃない。その仮面が剥がれた素の一瞬、まで「芝居」で見せていると言ってもいいかな。そういうことを本能的にやってしまうってことさ。
 だから嘘だとかってんじゃないのよ。むしろ、そんな風に膨れ上がった自意識こそが役者の証で、スターの証ってことだもん。

 だもんで、「泣かせ」ということになると、それがかなり前に出る。感情の高揚~涙というシチュエーションをどう即興でこなすかという、腕の見せ所感がばしばし伝わります。 
 で、10周年記念でそこを編集してまとめて流してると、もう成功例、失敗例、芝居の上手下手、自己演出能力ってのが一目瞭然なんですわ。
 失敗してたのがシャロン・ストーン、私はこの人、演技力はかなりあると思うんだけど、恩師だったかの死を語るのに、感情の高揚の調整失敗でオーバーアクト気味になってた(いわゆる、役に引き摺られてた状態)。も一人がジーン・ハックマン、幾ら何でも60年前の両親の離婚の話で涙を浮かべるタイミングが早すぎ。「はい、ここで、涙」という無意識の準備がお先走りしたというかね。
 うまかったのはやはり、ジャック・レモン。アルコール依存症の告白だけど、アル中の役柄がらみの話から「で、僕もそうだったんだ」にすとんと持ってく呼吸が絶妙。相手にはっと息を呑ませて(これはインタビュワーのJ・リプトンの受けの間もうまかった)、その事実が相手に染みこむのを待ってから、「そう、僕、ジャック・レモンもアルコール依存症だった」と静かに繰り返すとこは圧巻だったわ。

 んで、アクターズ・スタジオでやってるってのもまた売り物ですから、観客は生徒だ。
 これがまた面白い。
 いえ、メインのインタビュー後の学生からの質問受付ってのはさほど面白くない。だって、大概のスターが小ネタかちょっといい話か人生訓語るくらいだしな。聞く方もたいしたことは聞かない。唯一、印象に残ってるのは、デ・ニーロが「芝居につまりそうになったら、相手の台詞をよく聞け」と言ってたことくらいだ。(相手の台詞を聞けば、自分の役がまた掴み直せる筈だ。相手は君じゃなく、役に向かって話してるんだからってな話だったと思う)
 私が好きなのは、客席のその生徒たちの表情。
 だって、彼らも役者の卵なわけで、トーゼン、「憧れの先輩を胸を熱くして見つめる未来のスターたち」という「素」の役を全身で演じてる。そんで、いつ客席にふられるかわからないカメラのために、ゲストの言うことに一つ一つ、表情や身振り(大きければいいわけでもないけど、目立たなかったら意味ないしねえ)で反応してみせてるわけですよ。
 何故って、それがゲストの目に止まるかもしれないでしょ。カメラに映ったときに「いい表情」してれば、それでオーディションの話が来るかもしれないでしょ。どっかのプロデューサーが見てるかもしれないじゃないの。その万分の一のチャンスのために、みんな全身全霊で、「夢中で聞き入る生徒」の芝居をしてる。おそらく、服装やメイクだって気を使ってると思うね。「貧しいけれど夢で一杯の役者志望の若者」って線で、どう自分をアピールするかっていうの、みんな必死に考えてると思う。
 その力の入れようはステージに居るゲストたちより遥かに熱く、熱い分、より露骨でばれやすいんだけど、私は観てて楽しい。時として、ふとこっちの胸も熱くなったりする。さっき書いた俳優の「泣かせ」即興芝居については、ある意味余裕の演技だけど、こっちは切ないんだよ。

 繰り返すけど、それが悪いとか嘘って言ってるんじゃない。やらせとか言うのとは天と地ほども違う。全然違うんだから。
 役者、というのは自分の身に起こった事実まで、再現して演じずにおれない人たちなんだなあと。そうやって「素」を演じることで、「かなりよいしょ気味のインタビュー番組」を一個の人生ドラマに変えてしまう、欧米の俳優ってのは凄いよなあってのが言いたいわけ。
 無論、それを支えてるのが、さっきも書いたJ・リプトンの受けの芝居だけどね。インタビュワーもまた、役者としてこのドラマに参加してるわけさ。観客席の生徒たちは観客を演じてるしね。

 これがブロードウェイを支えるんだなと思うのさ。これがハリウッドを支えるんだなと思うのさ。

追記:「素」を演じることについて。
 ええとね。例えば、思い出を語る場合ですが、そこであったことはホントだろうし、それを思い出して揺り動かされてる感情も本物、けれど、それを話すときに、まんまを出すんじゃなく、どうプレゼンテーションするか考えてしまうってことですね。効果的に伝えるためのテンポとかタイミングとか、表情とか。
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by acoyo | 2005-08-26 17:30 | 映画・ドラマ | Trackback(1) | Comments(11)
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Tracked from ひいろお倶楽部@ at 2008-09-16 18:35
タイトル : また今更ですが「アクターズ・スタジオ・インタビューその2」
こんにちは、2日ぶりのGです。 いやね、昨日のリリーフ日勤が去年までの店員時代を含めて 日勤での自己最高記録に達したか同等くらいのペースだったんで 昨夜からVery Very Tiredなんですよね・・・。 何かお手軽な記事でもアップしてストレス抜きたいなあ、と思って Youtubeの投稿テストみたいな事でもまたやろうかと考えてたのですが 前回のツリボットの記事の地雷バトンの大元をメモ帳へコピペした際に 見つけちゃったんですよ、3年も放っておいたコピペのメモ帳が。 ...... more
Commented by manyana at 2005-08-26 18:42
「素」って、どこからどこまでか…というのも微妙ですよね。TV出演とかでなくても、まったくの素人でも、自宅以外では本当に「素の自分なのか」って気もしちゃう。
人間って、無意識に役割分担してるトコロあると思うんです。俳優さんならなおさら…かもですね。

以前、60 minutesでジム・キャリーのインタビューを観たんですけどね。一言一言じっくり考えてから発言していて(目が泳いでる事もありましたっけ)、とっても神経質そうで、彼主演の映画のキャラとあまりにも違うから逆にすんなり「これが素なのか」と思っちゃいました。けど、言われてみれば、それも「素の演技」なのかもしれませんです。
Commented by forest-sea at 2005-08-26 23:39
↑↑↑『人間って、無意識に役割分担してるトコロあると思うんです』全面的に同意。始終演じ続ける生き物なのに、演技に上手い下手があるのは、それは想像力の有り無しではないんかいな?技術論というよりはね。
Commented by つきっつ at 2005-08-27 11:27 x
昔から思うんですが、大竹しのぶって人は人生を演じているように見えます。気のせいかな?
そういう自分も、周囲をだまそうとする芝居や、ときには自分だますための芝居もしていた、しているという自覚はいろいろ。でも、芝居が下手でキャラに一貫性がないような気がします...
Commented by mush at 2005-08-27 12:24 x
逆の意味で、あまり演技力のない俳優は素を見せちゃうのかも?しれないですね。ヒュー・グラントがリプトン氏に『ゲーリー・クーパーの再来』みたいなこと言われてドギマギしてるのを観てちょっと好感もちました(^-^)
Commented by yaling at 2005-08-27 15:45
フフフ。aco様にかかればマンネリ気味のあの番組だって立派なエンターテイメントになっちゃうんだな。以前「北野誠」氏が「波乱万丈」に出演した際に「あんな気持ちのいい番組はない」なんて言ってましたっけ。自分の半生を自分が主人公になって、再現ドラマまで作って振り返ることができるのは、芸人・役者をやってる目立ちたがりで「オレオレ主義」な彼らにとってこれ以上の番組はないんだろうなぁ。ちょっと高尚な「笑っていいとも」よろしく出演者を気持ちよくさせるジェームズ氏もその辺確かに巧いしね。でもホントacoさんの仰るとおり、私も最近見てなかったなぁ。だってあんな3流役者のB級映画を振り返って「あのシーンはすばらしい」なんて歯の浮くようなシーンが多かったもんなぁ。そんな番組で私が一番印象に残っている一言はなにげにスピルバーグの言った「映画を勉強する人間はまずビデオのボリュームを消して画面を見てみるといい。絵力のある映画は音声がなくてもちゃんと最後まで観ることができるから。」でした。
Commented by zazies at 2005-08-27 16:47
生徒たちもそうやって見るとおもしろそう。子供の頃MGMのミュージカルが大好きでよく観てたんだけど、端っこで踊ってるねーちゃんまでが主役ですって顔して映ってるのがすごく印象に残ってます。はしっこだから、エキストラだからとおざなりにしないで、ほんの一瞬のチャンスでもつかんでみせるんだって意気込みがちっこいTVで観てるこっちまで伝わってくるパワーは大したもんですよね。その勢いでもっと質のいい映画を作ってくれハリウッド。
Commented by acoyo at 2005-08-27 18:19
★manyanaさん
私は人生って、ロール・プレイングの連続だなあと思ってます。けれど、それを意識しすぎるといわゆる「自意識過剰」ってので、人生生きづらくなります。そこんとこ被ってる俳優さんってのは、たいへんだなあと思うんです。J・キャリーってのは実際は頭のいい、神経質な人だと思うんですよ。だから、それが素に近いって思うんだけど、それもまた「素」そのものじゃないなあと。といって、人なんてみんなそうかもしれませんね。それを自分でわかっちゃうかわかっちゃわないかが、役者とそれ以外の人の違いかもしれません。「Wの悲劇」で、親友が死んで泣いてる時でも、身振り計算してる自分に愕然としたって台詞があったとし。

★fores-seaさん
「想像力」というのはあらゆるくりえーちぶな能力の根幹ではないかと最近思います。ただ、想像力があってもそれを出力調整しないとだめなわけだし、そこが技術なんじゃないかなあ。
Commented by acoyo at 2005-08-27 18:20
★つきっつさん
大竹しのぶはそうでしょうねえ。私は彼女が嫌いですが、そこが嫌なんじゃなく、あの「熱演大芝居」をうまいことにしちゃってるへんかな(藁)。
ああ、そうか、キャラの一貫性ですね。それは私も日々考えねばならぬ問題です。かなりスキゾフレニアに思われてますから。

★mushさん
H・グラントのはユーモアあってまあまあでした。でね、私なんかはつい、「いいじゃん、今の照れ方。君らしい芸風だよな」とか褒めちゃうんですよ、心が黒い(藁)。
Commented by acoyo at 2005-08-27 18:20
★yalingさん
あははは、おっしゃる通り、最初、アクターズ・スタジオだからもっと突っ込んだ議論があるかって期待してたんですが、あれだもんで。他の遊び方を考えました。ただ、T・クルーズが10周年ゲストでまた出て来て、「こんなにいい番組はない!」って力説してまして、そりゃそうだろ、お前のあれとあれとあれの芝居、褒めてくれるのはこの番組くらいだもんなよ、でも、観客だって誰も本気で拍手なんかしてねえよ、と突っ込んでしまいました。確かに、私が俳優なら、絶対出たいな(藁)。
でも、おっしゃるように、そのスピルバーグの一言とか、デ・ニーロの一言とか、確かにたまには出るんですよね。それが肉声で訊けるのがね。そいと、ラストの質問に対する答えで、頭のできが一発でわかる(藁)。

★zaziesさん
↑のような、暇つぶし的視点で開発した楽しみです。ああ、端役の人に、時々、はっとするほどいい顔がいますね。というか、エキストラの端の端まで、気合いの入った顔にさせる監督とか演出家とかが今、少ない気がします(メイキングで見た、エキストラの芝居をつける黒澤の迫力、凄かったもの)。ホントに、これだけの底力を生かし切った作品が見たいです。
Commented by tonbori-dr at 2005-08-27 19:01
教育で再放送したりしているけど気になる人しか観ないのでなるほどそういう視点はアリだなと思いまった(^^)
そういうのも含めてのメソッドが日々蓄積されているというのが考えるとすげえーという気もしますね。
Commented by gun_gun_G at 2008-09-16 18:51
その2がトラバできないようでしたので、こちらにトラバしました。
3年間も放ったからしですみませんでした!
遅ればせながら宜しくお願いします。
それとtonboriさんのところでレスした翌日に
acoyoさんのレスを拝見しビックリしました!
こちらのブログが再起動するまで静観するつもりでしたが、
焦らずゆっくり、ゆっくり復帰して下さい。気長にお待ちしてます。
・・・って、いつもacoyoさんからレスなどで応援してもらってる
病弱Gが書くと説得力がありませんが(笑)