キュアーと椿が好きだった王女様のために
●椿 - Mのこと(隅っこの蜘蛛)
姫ちゃん、と書くと、うちによく来てくれる方には、ああ、あの人かとわかるかもしれない。
私はそう呼んでいて、彼女は姉様と呼んでくれた。
私がブログを始めて、右も左もわからなかったとき、そんなかなり早くにここをリンクしてくれた人だった。
彼女もここでブログを持っていた。途中から忙しくて出たり入ったりしてたけど、来られる時はいつでもコメントをいれてくれた。おかあさまの影響とかでロートルのロックにも詳しく、キュアーとかジム・モリスンとかパティ・スミスについてきゃあきゃあ書きあったりした。
そんな彼女のブログは、才気溌剌として滅法鋭く、切れば赤い血の出るようなエントリが並んでいた。書かずにはおられない人だなとすぐわかった。上げてくる画像も、センスのいい、それでいて艶のあるものが多かった。私は彼女の色の使い方がとても好きだった。
それでいて、かなりなお茶目さんだった。東映の怪人ネタなんか出して来た。ガンダムも好きだったし、バイオのレオンが好きで、メタルギア3のボスがステキっと書いてくれた。
彼女は、ここで私が得た、友達だった。
そんな姫ちゃんが、私がHPに書いた拙い文章を読んで、「でも、私はむき身でもいいから刀が欲しい」とコメントをくれた。私は姫ちゃんはとっくにそんなもの持ってるよとレスした。
その通り、彼女は時に、月にきらりと青く輝く、銀の小刀のようなとこをみせた。その痛々しいくらいの真摯さと激しさは危なっかしかったけれど、それもなんだか、自分のとても若い頃を見ているようで、微笑ましかった(そう言ったら、姫ちゃんは怒っただろうけど)。
そして、そう言う自分もまだアップ&ダウンが激しい生き方しかできないくせに、勝手に世話焼きねいちゃんの気分になっていなしたりしていた。
そのとき、姫ちゃんはもっと強くなりたかったんだろう。
自分がホントに欲しいもののために、もっと強くなりたいと必死に願っていたんだろう。
それも、私にはなんとなくわかる。戦って幸福を勝ち取るために、あるいは守るために、彼女は牙を磨きたかったんだ。
少し前から、姫ちゃんは恋人と一緒に暮らしていた。
そうするまでに彼女の中で乗り越えなきゃいけなかったことがどれだけ多かったか、はっきり書いてはいなかったけど、読んでいれば察しがついた。
けれど、自分がホントに欲しいものだけあればいいんだ、と決意して踏み出しただろう彼女は、何か一つ抜け出した。エントリにも、「私はこの人が大好きなの。何があろうが、どんなにヘビーだろうが、それでも、私は誰よりも大好きな人と今、一緒に居るの」という思いが迸るような、弾けるような、凛としていながらセクシュアルな、読んでるこっちをぐいぐい圧倒する文章を書いてきた。
なんかキュアーみたいだな、あの■FRIDAY I'M IN LOVEみたいだなと私は思っていた。(彼女もブログで訳したことがあると思う)
あの歌のように、天国まで一気にフルスロットルで加速してつき抜けて、雲の上でくるくると果てしなく旋回しながら踊っているかのようだった。
けれど、ふいに、姫ちゃんは、眩しい雲の光の中に見えなくなった。
姫ちゃんは、もう居ない。
だから、きっと、神様は居ないに違いない。
そうとでも考えないと、辻褄があわない。おかしすぎる。あんまりだ。
あんまりに、無念すぎる。
それが彼女の今の安らぎを妨げる言葉であったとしても、私はそうとしか思えない。
*ご家族の方や、パートナーの方には、申し上げる言葉さえありません。
だから、こんな立場の私が書くのは、僭越かと悩みましたし、私がこのことを知ったのはほんの数日前で、もう少し時間を置いてからと最初は考えていました。
けれど、むしろこんぐらがった今の気分のまま上げた方が、姫ちゃんなら「aco姉様らしい」と言ってくれる気もして、敢えて上げました。こんな素敵な女の子が居たんだよと、どうしても誰かに知ってもらいたかったんです。それこそ、キュアーの別の歌じゃないですが、Nothing else I can really doで。
画像の言葉はラベルのピアノ曲、「逝ける王女のための孔雀舞」の原題です。
二周りも歳の離れた親しい男性と飲んだ。母親が痴呆になったそうだ。彼は言う。「数十年も一緒にいて、父が先に亡くなったら途端に母は痴呆になった程だ。それが今では父の悪口しか言...... more
彼女とは直接お話させていただく機会がありませんでしたが、ここでよく拝見しておりました。さきほどふと「google」で彼女の足跡を辿ってみました。
「彼女は確かにそこにいました。」
自分はなぜ生まれてきたのか。自分の存在意義は?なんてことをずっと昔に考えたことがありました。答えなんて出てきませんでしたが、「自分がそこにいたという足跡をしっかりと残す」ことさえ出来れば、それだけで十分に自分の生まれたことに意味があるんじゃないかと思いました。
「彼女は確かにそこにいました。」
私もそう思ってもらえる人生を歩まなきゃなと改めて思いました。
わざわざありがとうございます。うれしかったです。
★じゃぐあ様
コメントありがとうございます。私も祈ることしかできません。
★yalingさん
↑のじゃがさんのもそうでしたが、泣けました(藁)。
>「彼女は確かにそこにいました。」
ええ、泣きました。姫ちゃんにとって、この上ない餞(あえて追悼とは書きますまい)と思います。
まったくさあ、師匠ってさあ、普段は忙しくてあんま書いてくれないのに、モロ勘所弁えて登場なさるんですんでさあ、よっ、女泣かせって言いたくなるわ(藁)。
★そいで……他にも気にかけてくださった方々がおいででしたら。
ありがとうございます。