線路沿いの落霞紅と暮云灰 &DAZAI
落霞紅(らおしあほん)は中国語の夕焼けの空の色、暮云灰(むーゆんかい)は雲の色。日本語だと夕焼け空の色が茜色で、夕映えの色が夕色(英語だとafter glowというとこですか)、さらに時間がたつと暮色。
きょうの空のあかあかしさは、なんとも綺麗だったのだけれど、どこか禍々しかった。
なんとも華やかに鮮やかしい色なのに、その芯は昏(くら)く沈んでいる。綺羅綺羅しいのに、どこかがさがさと猥雑でいて、奥の方から惨たらしい匂いがする。
そういう俳句を探したが見つけられなかった。太宰治が短編でこんなことを書いているのが、一番、近いのかも知れない。
↓ツヅク
本職の詩人ともなれば、いつどんな注文があるか、わからないから、常に詩材の準備をして置くのである。「秋について」という注文が来れば、よし来た、と「ア」の部の引き出しを開いて、愛、青、赤、アキ、いろいろのノオトがあって、そのうちの、あきの部のノオトを選び出し、落ちついてそのノオトを調べるのである。
トンボ。スキトオル。と書いてある。
秋になると、蜻蛉も、ひ弱く、肉体は死んで、精神だけがふらふら飛んでいる様子を指して言っている言葉らしい。蜻蛉のからだが、秋の日ざしに、透きとおって見える。
秋ハ夏ノ焼ケ残リサ。と書いてある。焦土である。
夏ハ、シャンデリヤ。秋ハ、燈籠。とも書いてある。
コスモス、無残。と書いてある。
いつか郊外のおそばやで、ざるそば待っている間に、食卓の上の古いグラフを開いて見て、そのなかに大震災の写真があった。一面の焼野原、市松の浴衣着た女が、たったひとり、疲れてしゃがんでいた。私は、胸が焼き焦げるほどにそのみじめな女を恋した。おそろしい情慾をさえ感じました。悲惨と情慾とはうらはらのものらしい。息がとまるほどに、苦しかった。枯野のコスモスに行き逢うと、私は、それと同じ痛苦を感じます。秋の朝顔も、コスモスと同じくらいに私を瞬時窒息させます。 (太宰治 「ア、秋」)
……つうか、小娘の頃にさんざん太宰(と安吾)に誑かされたという(涙)、そのとっと忘れたい恥ずかしい過去が、ひょいとした弾みに蘇ってそう感じただけなのかも知れない。人の感受性なんて、読んだものでどうにでも支配されるからね。
それでも印象が近いというだけで、やはり少し違うのだけれど。
この太宰の引用にあたっては、●青空文庫のお世話になりました。一々、本棚ひっくり返さずに済んで、とても有り難いです。
なお、この「ア、秋」の全文はこちら→●青空文庫>「ア、秋」
それはよく解る。一時ハードボイルドな台詞ばっかつかってたことあったもん(苦笑)
結構きれいなモノは綺麗で、ほんで感動するものはやっぱり感動するし。それが万人に受けるかどうかはやっぱコレまでの辿ってきたものと蓄積に左右されますなあ(^^;
そういや長らく本なんてものを読んでいない・・・(ダメだわぁ)。何も考えずに仕事してるフリなんかしてるからこんなことになるんですよね。忙しいから本が読めないとか時間がないから運動しないなんてのは単なるいいわけにしか過ぎないことなんてとっくに気づいてたはずナノニ…。感受性が支配されるなんて仰りますが、それは逆に、読んだ本に支配されちゃうぐらい感受性が豊かってことで素敵なことだと思いますわ。なんだか最近本を読まないどころかどんどん自分の殻が硬くなってきてこのままそこから抜け出せずに堅物オヤジになってくような気がしてちと恐い。目指していたのは「雲のジュウザ」だったんだけどなぁ…。
関係ない方向に飛びますケド、ジェットコースターやお化け屋敷、吊り橋を渡る時のドキドキが恋愛感情に変わる(勘違い?)ことがあるらしいですし、ヒトの感情を揺さぶるモノって対極のモノでも共通する何かがある。逆もまた然り…ってカンジかもですね。
だけどキレイな空だなぁ〜。
っていうのがあったね。そういう赤かな。
じ、地震くるのかな・・・!
私は今もその「ハードボイルド癖」が治らず、「俺たちに選択の機会なぞあったか?」的言説をぶちかましては「変な奴」と思われています。日本のドラマとどうも折り合いが悪のはその手の台詞が皆無だからと思われ(藁)。
★PiuLentoさん
そ、そうよね。私もそのボランティアをやろうと思いつつ、仕事をこれだけためる女が果たしてほんとにするのか?という恐れが大(藁)。
★さっちゃん
抽斗、片づいた?
★over45さん
大陸の夕日ってのはさぞや豪勢なんでしょうねえ。一度見てみたいです。
わたくしも実は長らく本など読んでおりませぬ(藁)。yalingさんは「仕事」って場でがんがん感受性磨いてるし大丈夫と思われ。居職ってねえ、閉塞してダメっすよお。
★manyanaさん
なかなか小娘の心をそそる台詞でがんしょ? あ、その吊り橋恋愛理論、なんか私も身に染みた覚えがあります。んでもねえ、そういう恋愛沙汰ってロマンチックで楽しいのよ~(藁)。
★wake1さん
そうそれ。そういう感じの赤!
★samuge-nikukyuさん
そうそれ。そういう感じの赤!(藁)
★spider_edgeさん
ぬっ……俳句までおやりになりますか。くそー。
★jaguarmen_99さん
確かに、大笑いこいちまいかねない赤さです。笑っちまった方が、よくないもんにとっつかれないでいいと思われ。
★mushさん
太宰のタチの悪いとこは、文章うまい以上に、「熱烈なファンにさせるタイプ」の文章だってことですわな。中毒抜けるのに数年かかりました。