「何かがドアをノックする」 ハロウィン in Japanの惨劇。
●<ハロウィーン>仮装450人が3両占拠 JR大阪環状線
私はこの記事自体にはさほどどうとも思わない。まあ、わしらの流儀がグローバルスタンダードと信じて疑わぬ脳天気なガイジンと負けずに脳天気な日本人が一緒になって騒いだんだろうか、人の迷惑ってのもあるし、みっちり怒られてこいってとこで。
ただ、個人的に、この「ハロウィン」がらみで悲惨な話を聞いた。
昨年の今日、東京のマンションで一人暮らししている連れ(女性)は、徹夜仕事明けで爆睡していた。それがお昼過ぎ頃、叩き鳴らされるチャイムの音に飛び起き、寝惚け頭でついドアを開けちまったら、
「お菓子くれなきゃいたずらしちゃうぞ!」
何かのアニメヒロインのつもりが結果は商売女みたいなカッコでご満悦のガキと、もっとご満悦そうなおかあさまが立っていた。何が起こったの?と呆然としている彼女に、そのおかあさまは、地域の子供会でこういうお祭りします、「子供のためなのよ、だから」協力してよねってチラシ、入れておいたし、マンションの掲示板にも頼んで貼っておいてもらったわよと胸を張ったそうだ。
彼女はちゃらんぽらんなやつだもんで、チラシの類は概ね見ずに捨てるし、掲示板なぞゴミのことくらいしか真面目に見ない。冷蔵庫には酒しかなく、甘いもの嫌いでお菓子など家にない。
それで、何で私が恐縮しなきゃいけないのよと思いつつも、「ごめんね」と謝った。
すると、子供は即座にむくれ返った。おかあさまも憤然となさった。そのまま、親子は無言で去った。そして、彼女がドアを占めた後、廊下から聞こえよがしに娘に語りかける母の声。
「ごめんね、○○ちゃん。あんなに楽しみにしてたのにね。ひどいおばちゃんだね」
大なり小なり、似たような雰囲気の訪問が、その後も続いたそうだ。
その地区の子供会は今年もハロウィンをやるという。彼女は、商業主義と「子供のためなら許されないことはない」と信じて疑わぬ親が合体するとろくなことはないと怒りまくった末、今年は一日外出すると宣言していたが、どうしているだろう。
↓ツヅク
これをキリスト教の習慣と勘違いしてる人もいるけど、キリスト教以前の、ケルトの名残を引いたお祭りです(勿論、キリスト教の祭礼ってのは、実際んとこ「キリスト教以前のヨーロッパの土着信仰」との妥協案で作ったもんがあらかたなんだけどね)。
お盆+百鬼夜行が一緒になったような、アメリカの子供にとっては「怖くて楽しい」お祭りなわけだよな。ハヤカワや創元推理、アメリカの小説やTV、映画見てた人は、そんなハロウィンってのとは、こんなに流行る前から馴染みだったと思う。
子供だけで*1夜の町を歩くってだけでも十分スリリングなのに、そこには化け物がうろついてる、そんな中を化け物のふりで潜り抜け、知らない人の家をノックする。そりゃあ楽しいわな。だって「怖い」がくっつく楽しみくらい、子供の好物はないじゃん。
だから、かのレイ・ブラッドベリみたいな作家にとっても、ハロウィンは大好物の一つだ。彼の長編、短編に繰り返し使われるテーマになってる。なんてったってThe October Country、「十月はたそがれの国」だもん、Something Wicked This Way Comes、、「何かが道をやってくる」だもん。(「ハロウィーンがやってきた」ってなそのものズバリのタイトルのも) そして、「十月の旅人」というアンソロジーには、ハロウィン物&モダンホラーの最高傑作の一つ、「十月のゲーム」が収録されてる。
んだから、キングを始めモダン・ホラーの作家も必ず一度は書く。連続ドラマならクリスマスや収穫祭と並んで、必ずハロウィン・エピソードがあり、それはちょっと「怖い」話になっている。映画じゃ無論、「ハロウィン」を筆頭に数知らず。(一昨日からケーブルのディズニーChじゃ、延々それからみのTVドラマや映画やってる、よくまあこんだけと思うくらいある)
一つ例を出すなら、「アラバマ物語」という非常にシリアスな、そしてヒューマンな傑作映画でも、クライマックスの(子供が巻き込まれる)殺人事件が起こるのはハロウィンの晩なんだよね。
子供たちの足音で、カレンダーの日付がわかる。子供たちの叫び声で、今夜はどんな夜かわかる。一年も終わりに近いころ、十月。白骨の仮面やカボチャの提灯が踊り、溶けたロウソクの匂いが漂う十月の末日。(「十月のゲーム」伊藤典夫訳)……少なくとも、日本のハロウィンってのは、そういうものと全然違うんだなと。
それなりの歴史と伝統が醸す「地に足着いた」雰囲気ってのはなくって、コスプレと菓子もらうことだけに換骨奪胎されてるしさ。だから、やってる側は楽しいんだろうけど、見てるだけの側としては、夢もロマンもありゃしないって感じなんですわ。正直なとこ。
そいで、そーゆー張りぼてのお祭り騒ぎもそれで楽しけりゃ結構だけど、まずもって、今んとこそれで「楽しくってロマンなのは自分らだけ」なんだから、人の迷惑だけはきっちり考えてやってねってとこで。
ほんで、次は何だ? ついに収穫祭に手をつけるのか?
なお、このエントリは面白いです。カオスの祭りとしてのハロウィンを書いてはります。
→●ハロウィン恐いよぉー、恐いよぉー!!(yesterday_today)
*1流石に今ではアメリカでもこれはかなり難しく、親同伴が主になってきてるが、それをあるコラムニストが、「子供だけで夜の町を歩けないハロウィンは、最早ハロウィンじゃない。そして、商業主義だけが残った」と嘆いていた。
■レイ・ブラッドベリ(wikpedia)
ブラッドベリの作品については文書中にアマゾンへのリンクがはってあります。
(なお、このブラッドベリやジャック・フィニィの強い影響を受けた漫画家内田善美がアメリカの小都市を舞台に描いた佳作、「万聖節に黄金の雨が降る」ってのを描いてる)
クリスマスやバレンタインデーやら異国の祭りを取り入れるのが得意な日本人だが、ここ最近はハロウィンを定着させようとマスコミやメーカーなども力を入れているようだが、正直言って僕はなんか恐い。 まず「ハロウィン」自体が狂気とか死の雰囲気を持っているカオスな祭りであるということ。そもそも祭りというのは「日常の秩序をいったん破壊することで秩序を再認識させる」という側面を持つことはよく言われるのだが、ハロウィンは特にそういう側面を強く持つ祭りであるようだ。(死者の霊が家族を訪ねるというような部分は日本の御盆...... more
あこさんが《「何かがドアをノックする」 ハロウィン in Japanの惨劇。》とゆー記事を上げてらしたけど、こりは「 ハロウィン in Italyの惨劇」でございますです。世界びっくりニュース「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ」の少年2人、撃たれる | Excite エキサイトANSA通信によると、破裂音と奇妙な扮装に怯えた年金生活者は、お菓子の代わりにライフルを発砲、少年たちに4発の銃弾を撃ち込んだ。 警察は男性を殺人未遂の容疑で逮捕したが、男性は一人暮らしでこれまでに何度かドロボウの被害に遭って...... more
たしかにそのときの私たちは、無償のスペクタクルに全力をかけていた。無償のエネルギーといってもいいだろう。自分たちの芸術の集団(グループ)を作ることも、まるで作品を作ることのように思っていた。集団のエネルギーも、ほとんど作品のエネルギーと同一視していたの...... more
実の所、幼少のみぎり、日曜ミサなぞに足しげく通っていたため、
この手のイベントには慣れっこなんですが、
地域内の交流をお題目に一部迷惑イベントとなっている様ですね。
別に魔女の格好しなくたっていいから、普段から挨拶しろよ!
って文句が出そうになるのをグッと飲み込んでおります。
普段から親密でなくても一応の付き合いというものがあって、
その上でイベントですよ~と来るのなら別なんですけどね。
一回、地下室を開放して魔女の骨でも廻しますか(笑
ケンタの喰い残しとかじゃなくて、人体模型のゴッツイやつとか。
って、こういう悪意或る大人がいるから・・・・
楽しいんですけどね(笑
あ、地方によって違うのか。
これは仕事の合間にハロウィンのパレードに参加してきたに違いないと
冷やかそうとしたら、「いえ、これ違うんです。一緒に暮らし始めたカノジョがネイルアートの卵で、練習台にされたんです」だと。
そのあと、たっぷりのろけ話を聞かされた上に、夕飯代を払わされて別れたのでした。く、くそ~(^"^;)。
私はプロテスタントなのですが、ごく一般的なプロテスタント教会ではハロウィンを取り上げないですし・・・。
クリスマスも本当はクリスチャン以外には関係のない行事なので、結構苦笑することも多々ありますね。
それでも一応、クリスマスに関しては大きな目で(←偉そう・笑)世間のお祭り騒ぎを眺めていられる精神的余裕があるのですが、ハロウィンは駄目です。
何の縁もないのに悪のりしすぎ(爆
日本のハロウィンは、クリスマスみたいなもの?という認識をしております。カボチャかわいい。
楽しいことをやるのはいいけどクリスマスも含め一応のアウトライン的なものは知っといた方がまあいいんじゃないかなとは日本の祭りも含め時々考える今日この頃。
それはともかく、ブラッドベリとかティム・バートンとか、「あのての人たち」はハロウィン大好きですね。今日はなんとか仕事を定時で終わらせて「コープス・ブライド」を見に行くつもりです。
おお、やはりお読みでしたか! あのラスト一行のオチがいいですよねえ。そうハロウィンなんだから、悪意は必要。そういう大人が子供の一生忘れられない体験を作ってあげるのです。
★forest-seaさん
その「十五夜の~」っての、そういったことも書きたかったんだけど、長くなりすぎて止めたの。私はハロウィンで盛り上がるより、「子供を楽しませる」のにはそういうお祭りを復活させて欲しいなあと思ってます。その方がかっこよくて、おまけに大事なことだと思うもの。
★belltoneさん
お馬のお姿を拝見いたしましたが、物のわかった人がバカ騒ぎってのは私も好きですよ。多分、一番嫌なのは「子供のため」を振りかざされるとこでしょうね、きっと。
★kiyotayokiさん
人の惚気というのは無料の晩飯付きでも無い限りききたくないものですが、それを奢ってまで聞いてあげる!ううん、大人だなあ……。
連れが子供の頃からのカトリックですが、やはりそういうのはないそうですね。それで、最近では教会に問い合わせがあるそうです。ええ、信仰持ってない人から、「何かそういう子供向きの催しあるんでしょ?」と。
でも、「じゃ、クリスマスとどう違うんだ?」ってことなんですが(何せ、私はクリスマスには命をかける無信仰者だもので、スイマセン)、私にはなんか明らかな違和感があるんですよ。それについてはTBくれたyesterday_todayさんの意見が面白かったです。
★samuge_nikukyuさん
「たんぽぽのお酒」は私も大好きです。でも、ダークなブラッドベリは、はまるとちょっとの間、中毒になります(藁)。いや、あの頃は若かったからか。
★tonbori-drさん
season spritというのが多少でも伝わっているクリスマスに比べ、ハロウィンは脇浅すぎという感が(大藁)。確かに、日本の祭りでもそのアウトラインへの知識が無くなるというのが、形骸化への第一歩という気がするんですね。それで、お祭り好きとしては「生きた祭り」の方が面白いに決まってると。
最近のカーナビは何?(爆藁) やっぱ新年には振りそで来てくれるんですか?
★kingodowさん
見ず知らずご訪問ってのは、東京の一部ではもう始まってますよ~。
子供にコスプレさせたい気分はわかります。私もいたら、やはりイウォークはどうしてもやらせたいもん(藁)。ただ、それで受けなければ、親の責任として項垂れようと(爆藁)。
「コープス・ブライド」行かれますか。感想上げてね。しかし、kingdowさん、忙しいのに、ちゃんと観るものみて、読むもの読んではりますもんなあ。見習おう。
いくら掲示板やチラシで告知されようとも、んなもんはそらちの勝手な都合なのに……。
もし私だったら仕返しに灌仏会に甘茶と花びら持って押し掛けてやるでしょう。
ブラッドベリというと(『たんぽぽ〜』しか読んだことないですが)萩尾望都を思い出します。
マンガしか読んでないのがバレバレです...
幼稚園の時から英語聞かせるのとかと並行してそういう文化もということなんでしょうか
それはいいとして 巡る家の側に選択の余地が与えられてないというのは企画としては最低のレベルもクリアできていない気がします
イベントの成否は9割がた仕込み(準備)で決まるとおもいます
やでしょ。その灌仏会の逆襲、ナイスなんで連れに伝えておきます。当人は電話したらハロウィン難民と称して仕事の打ち合わせの後飲んでたようですが、前日、近所のスーパーで、同じフロアのやはり独身の男の人が困惑した顔でお菓子の山を買ってたそうです。やれやれ。
★mushさん
わーい、内田善美覚えててくれた人が居た~。それだけで嬉しい! 今ではこの「万聖節~」、読めないんじゃないかと思うんですね。文庫サイズで出てるのはリデルだけじゃないのかなあ。
★umacoさん
私も不思議です。やはりコスプレと物もらえるからでしょうか? その英会話教室の影響も大きいかと。
子供会とかは家に居るおかあさんが主にやらされてますから、「仕込み」とかいう発想自体がないんですね。「子供がいるおうち」と「いないおうち」の感覚の差ってのもよくわかってないようで。PTAやってる連れもそれでよく頭抱えてます。
ああ、それ! それなのよ、その「物乞い」!(爆藁)。私や被害者の彼女が馬鹿騒ぎより、むしろこのtrick or treat?の方にムカはいるのは、バックボーンがなんもなくてそれやると、ホント物乞いってことなんですわ。
それも弁えず、「カワイイじゃないの、子供が喜ぶじゃないの」で済ませる感性がなんかとても嫌なんで。
昔は外にカボチャ提灯(?)だしてるのって、ガイジンさん宅くらいでしたけどね。ここ15年くらいでだいぶ定着してきましたね、ハロウィン。けどやっぱ、何か勘違いから発展しているだろーなムードが強いですね(^^;)
ゲイがパレードする日だと思ってるヒトもいたりして〜。
だけどお連れさん宅に押し掛けた親子(ってか親)はヒドいなぁ。フツーそーゆー地域のイベントは強制でなくて、事前に参加するかしないかを訊いてるだろうし。ちゃんと調べないで訪問した親の方が悪いですよ。
ムカつくわぁ〜。
お菓子くれるお家はカボチャ提灯をだしておく。そーゆー風にすればいいのに。
引用させていただいたので、TBさしてもらいました。
チョコレート工場観た後はチョコが食いたくてたまらなくなりましたけど(やっぱり)、ハロウィン関連の記事読んでるとカボチャプリンが食べたくなります。
クリスマスとの違い こちらもまだ考えがまとまりませんが、幸せ度の差は感じます。
ハロウィンってあんまり縁起よさそうな印象がないですよね。
クリスマスは単純に「誕生日」なわけで、無信仰の人たちも幸せのお裾分けに預かれば、それはそれで平和でいいじゃないかと思うのです。教会での礼拝も一般に門戸を公開していますし。
ハロウィンの場合、幸福感の共有というよりもタカリと悪ノリへの不快感が先に立つんじゃないでしょうか。
いえ、こっちこそ亀で(藁)。TBありがとー、嬉しい。
>ゲイがパレードする日だと思ってるヒトもいたりして〜。
爆藁。なんなんだなんなんだ、それはあっ(あ、腹いたくなってきた)。
>お菓子くれるお家はカボチャ提灯をだしておく。そーゆー風にすればいいのに。
それいいなあ、すっげえ可愛い! それはホンマに可愛い!
★nonkey37さん
わーい、TB嬉しいな。「幸せ度」ってありますね。私は受けた宗教教育が幼稚園のキリスト教だけで、お盆も法事とも仏壇とも縁のない核家族だったてのもあって、クリスマスというのは、ホントに大事な家族行事でした。シスターが「クリスマスの幸せは、自分だけ幸せになるものじゃなくて、みんなに分けてあげる幸せなの。そのくらい大きい幸せなのよ」とおっしゃったのを今でも覚えています。
悪のりの不快感、それがでかいでしょう、きっと。