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さよなら、おっちゃん。あたしゃあんたが大好きだったよ。


急死した田村高廣さん遺言…近親者だけで密葬

 最近、映画ネタ続くよな、そろそろ音楽ネタでもと思ったところにこのニュース。昨日は一人しみじみ喪に服したりしておりました。

 いえね、幼い頃からオヤジ萌えのわたくしが田村高廣を見逃すはずがなく。下の二人の弟さんにはまるで興味も無く(特に正和な。思わせぶりだが中身の無い使いやすいかもしんないが味の薄いタレントだと思う。少なくとも役者じゃない)、ただただ高廣様でございました。

 tonboriさんが書いてらした「兵隊やくざ」も勿論、好きよ。そいで、私は時代劇での、その存在感も無論、なんとも伝法な江戸弁が死ぬほど好きでした。
 あの方は京都出身だから、実際は関西弁の方がうまいんですけどね。でも、あれだけ見事な口舌の江戸弁で喋れる人がまた一人消えました。
 粋、とか、いなせ、が体現できる役者が、また一人消えました。かくして、「粋」も「いなせ」もどんどん消えていきます。

さよなら、おっちゃん。あたしゃあんたが大好きだったよ。_b0016567_1245154.jpg
 後は、やっぱ、なんといっても『泥の河』かなあ。
 私にとっては、邦画オールタイム・ベストを取ったら、確実に上位争いに食い込む傑作、つうか、「映画館で観た時の感動深すぎで観返すの怖いわ」的一作なんだけどな。前に書いた『竜馬暗殺』と似たような感じで、「日本映画週間」とかの時に大毎地下で観たと思う。(関係ないが、大毎地下もとーっくに潰れちったんだよな。あそこくらいお世話になった映画館もないというのに。んで、もっと関係ないが、あの映画さえ観ていなければ、うちの同居人改めシーゴラスの「骨の髄まで下町育ち」にふらっといったりはしなかった。母校に佃煮にできるほど居た、お品のいい山の手の坊ちゃんとくっついてたはずだ
 あの食堂のとうちゃんの役がものすごく好きだった。きいちゃんの歌に聴き入る顔が忘れられん。

 単に立ってる座ってるってだけで、「しんしんと」、その役の全人生を感じさせる芝居ができた人だった。
 といって「渋い」ってだけじゃないのよ。その気になれば垂れ零れるほどの色気が出せた。はっとするよな大見栄も切ってくれた。つまり大輪の華をやすやすと咲かすことのできる人だった。
 ともかくいろんな意味で、「大きい」役者だった。

 んで、田村高廣が亡くなったというのは、そんな一人の名優を失った、というだけではなく、かつては居た「美しい日本人」、というか「私の大好きな日本人の男」がまた一人消えたってことなんだな。何せ、これもう数が少ないのよ、すごく。イリオモテヤマネコ並の希少種。
 だから、寂しいんだ。すごく、寂しい。

 それで一つ言っとくけどさ、こういう見応えのある顔のおっちゃん、惚れ惚れするよなご老体が減ってくことで、今の若えもんの顔のつまらなさが加速してく気がすんのな。
 だって、対抗するべき先行世代が厳然と聳えたってなきゃ、若えもんの面構えは弛緩してく一方やんか。そんなおっちゃんの「大きさ」への「なにくそスピリッツ」が若えもんの面をびしっとさせるんだもん。(→例:パトレイバーのシゲさんがカッコイイのは榊のおやっさんがおるからで、遊馬のいたらなさがいたいけさに見えるのは後藤警部補がおるからだもの)
 つまり、頑固ジジイとくそババアこそが、「イキモノとして美しい」ワカモノを作るのではないのかと、最近、わたくしは思うわけ。
 んだからさ、「いつまでも若いワタクシ」に執着するんじゃなく、ばしっと老けてく、びしっと老いてく。それって、後発世代への義務でもある気がする今日この頃。己も深く肝に銘じておこっと。

田村高廣さん逝く。(web-tonbori堂)
小夜奈良。田村高廣さん。(風を泳ぐ)
by acoyo | 2006-05-19 12:05 | 映画・ドラマ | Trackback(1) | Comments(11)
Tracked from web-tonbori堂.. at 2006-05-19 23:38
タイトル : 田村高廣さん逝く。
Excite エキサイト : 芸能ニュース|急死した田村高廣さん遺言…近親者だけで密葬 [ 05月18日 17時05分 ]夕刊フジ 繰り返された言葉になるが昭和を伝える人がまた一人いなくなった。 「兵隊やくざ」などの粗暴な勝新とのコンビもはまり役だが数多くの映画、ドラマに出演し存在感をひらけかすのではなくちゃんとそこにいる存在を演じられる人だった。 以前4兄弟の対談番組があってことさらこの兄弟は偉大な父をいつまでも追いかけているしその父を誇りに思っているんだなと感じた。 謹んでご...... more
Commented by gun_gun_G at 2006-05-19 13:40
泥の河ですかあ・・・あの作品はいろんな意味で大きすぎて
Gにはどう感想述べて言いか分からないくらいの傑作でした。
この記事読んでてしみじみしますなあ・・・。また観たい映画です。
それを演じきれた偉大なる役者でご冥福を祈ります。
Commented by umaco at 2006-05-19 23:37
いつの間にか77におなりだったのですね
最初に田村高廣さんを認識したのはドラマ「二百三高地 愛は死にますか」だと思います(映画版は後からテレビで見た)
カッコよかったー
Commented by tonbori-dr at 2006-05-19 23:41
こちらもTB頂きました。
粋とかいなせとかほんまどんどん無くなっていくのが・・・なんか・・ね。
Commented by kiyotayoki at 2006-05-20 01:20
伝法って言葉、久しぶりに聞いたような気がします(最近の時代劇からは名優だけでなく、いい言葉も消えていってますよね)。
うんうん、伝法な口ぶりと、ちょっと猫背な後ろ姿が印象に残る役者さんでした。
「泥の河」、追悼映画としてBSかどこかでやってくれないかな・・・。
Commented by acoyo at 2006-05-21 12:10
★gun_gun_Gさん
私もまだどうにも書きようがありません。できればまた大画面で観たいですね。

★umacoさん
私はそっちのTV版は見てないんですよ。そうかあ、そんなによかったのかあ。映画はレンタルでなんとかなってもTVは見逃すとなあ。再放送かからない限りどうしようもないもんなあ。

★tonbboriさん
なんか……ねえ?

★kiyotayokiさん
はは、死語マニアなわたくし。ああ、そうです。ちょっと猫背です。猫背ってのは男によってはチャームポイント(爆)。
「泥の河」、この際、DVD買うかと思って調べたらボックスでしか出てないんですよ。こうなったらBS放送乞う!ですねえ。
Commented by pagem at 2006-05-21 20:29 x
シベリア帰りのうどん屋さんの役でしたね。加賀まりこの役が悲しかったです。子役ふたりが良かったですね。
Commented by s/yumic. at 2006-05-21 20:42 x
うひゃーと思いながらTB。
Commented by acoyo at 2006-05-22 14:46
★pagemさん
子役はよかったですね。いかにも子役子役した芝居じゃなくて、ナチュラルな芝居だったと覚えてます。

★ゆみたん
こっちもTBいただきます。ああ、いい男が消えるのは哀しい。
Commented by zazies at 2006-05-23 22:18
ニュース見て一番にacoyoさんを思い出しました。それなのに来るのが遅くてごめんなさい。
ほんとにね、時代劇できる重い役者が減っちまってかなしいですよね。武士の歩き方、座り方、立ち方すらできない俳優(役者とは言わん)が時代劇やると腹が立つどころか力が抜ける。あんたらコスプレかい!お願いだからもう時代劇は歌舞伎役者だけでやって!って叫びたいです。ときどき出てくる芸者のおねえちゃんは着物着たダンスだし。あーーーやだやだ。この日本の伝統と重さを守ってほしいと思う今日この頃。無形文化財保持者の永久保護はできないもんか。
Commented by acoyo at 2006-05-24 13:05
★zaziesさん
いえいえ、遅くてもウレシイです。わざわざコメントすいません。
>あんたらコスプレかい!
それとも、コントか?という体たらくですからね。NHKの時代劇まで「俳優各人の努力と資質」に頼ってるという、総崩れ状態ですから。
伝統とか文化ってのは、失われるとどうしようも無いんですよ。既に、殺陣は亡びる寸前、パンダの個体数並の存在ですし。
Commented at 2006-05-30 00:26
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