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わけいってもわけいっても青い山  半径750キロの散策:山形#1 羽黒山・湯殿山

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↑羽黒山参道の杉木立。クリックすると大きな画像が開きます。

 冒頭の句は、山頭火。
 そいで、レスとか遅れてごめんなさい。帰るなり、手ぐすねひいて待ってたKさんとメールの往復してまして(爆)。いえ、文句じゃないのよ、Kさん。仕事があるって何て嬉しいことかしら、とまだドラエモンのまんまの足を見ながら思ってますがな、ええ、心から。
 つうことで、明日こそ、ネットご近所訪問! ううむ、旅は楽しかったが、その点じゃ寂しかったよ。

 さて、本編。(↓ツヅク)




 さて、本編。
 シーズン前+元から人口少ない+当日、羽越線土砂崩れで不通=見事に人に会わないで過ごした山形四日間の旅、でございました。

wikipedia:出羽三山(羽黒山・湯殿山・月山)
湯殿山

 それぞれの説明はリンク先を見てください。まあ、山岳信仰ってのですな。大昔の映画で『湯殿山麓呪村』ってのがありましたが、あれは仏教の方でこっちは神社で、とかそういうことは言い出すと切りがないんで止めて、と。

わけいってもわけいっても青い山  半径750キロの散策:山形#1 羽黒山・湯殿山_b0016567_2135292.jpg んで、羽黒山な。山門から見たとこはどうということなかったけど、入るなりびびった。「結界」とか「聖域」とかいう言葉が頭に初号活字で浮かんで来る。うわ、現世から遮断されちまったって意識に、ばしーんと背中どやされた。
 高野山にも行ったことがあるけど、あそこほど洗練されてないだけに、頭じゃなくてまず体に来る。伝わって来るモノがプリミティヴで生な感じなのね。

 ともかく、山形では徹底的に「山」とか「森」とか「樹木」とかが生々しく立ち上がっていて、ぐいぐいこっちに迫って来た。私はしゃらこいエコだの癒しだのでえっ嫌いですが、一応、文化人類学とか民俗学とか囓ったりしたもんで、その生囓りでうろ覚えのタームがぼこぼこわいて来る(爆)。つい論文でも書いちゃおかとか思ったぜ。思っただけだけど。

 だからこそ、あたりを覆うように茂った夏草の中に、古びた小さなお地蔵さんとか見かけると、出し抜けに「ずきっ」ときたりしちゃうしな。
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 勿論、この足弱なわたくし、羽黒山でも本宮まで登れる筈もなく、天然記念物の爺杉と五重の塔見ただけで挫折しましたけどね。
 ただ、ここの杉並木の迫力はとうてい私のしょぼい写真で伝えられるものではないですわ。爺杉なんか完敗(爆)。上げとうても上げられん。
 手垢ついた言い方でいやなんだけど、山は(森は)生きているとひしひしと実感した。

 山はそのものが一つのイキモノで、木はその眷属なんだなあと。ここでこの木々から、そして山から見られているんだな、私はと思った。
 私は、「彼らの」テリトリーに居るんだな、私一人くらいどうにでもできるんだな、山は、と。
(それはその晩、銀山温泉で、はめ殺しのでかい窓から見える夜の山見てても思った。私が見ている分、山も木も、私を見ているんだって。ちょっとぞっとしたね)
 これを、たかだか人間風情が、守るの守らないの、言うだけおこがましいという感覚がした。

 んで、湯殿山ですわな。ここは「言うなかれ語るなかれ」なんで、ご神体が生で見られるよ~それだけじゃなくてね~なんてことは「言えまへん」(爆)。あちこちで書いてる人も居るが、それを私如きが不敬と言うのは僭越だけど、面白いモノを面白くなくしておると思うぞ。
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↑湯殿山参道入り口 クリックすると大きな画像が開きます。

 この写真の鳥居も、まあ、「派手にかまして」と茶々入れたくなるくらい、だせえ巨大なもんですが、これが人気のない、雨模様の霧がかかった山中で見ると、異様に迫力がある。
 しかもこれ越したら写真撮っちゃダメなのね(だったら、『湯殿山麓呪村』のオープニングに出て来るあれはなんなんだ、あれはいいのかと言いたくなったが)。
 んで、お参りについては、「え、マジでそれさせるの?」
 シーゴラス曰く、「本気やな、ここは」
 (一つだけ言うなら、女性の方、パンストと裾がまくれないパンツは止せ)
 とはいえ、お祓いする直前まで神主さん(かな?)は携帯かけてるし、人によってはおいおいと言いたくなるかもしんない。
 でも、その生真面目な本気と携帯電話と案内してくれた人の人なつこさ(山形で会った人はみなどっか人懐こかった)、それにご神体の堂々たるほがらかさがあいまって、なんともいい感じにいなたく、かしこばってるのより、かえって自然なんだな。
 民間信仰ってのは、概ねいなたくて下世話な部分というのがあって、それがその力なんだなと思うし、そういう点でこの神社は、そして出羽三山ってのは、紛れもなくまだ生きてると思った。
 だから、不可知論者の私も、とても厳粛な気持ちでお参りしたです。そいで、立派に生まれ変わった、ハズだ。今までの私とは違う、ハズ。(シーゴラスに言わせると、私は幼児教育のせいでどっかに一神教的モラルを持ちつつも、ベースがガキじみたアニミストだそうだ)

 先日見たTVで、岡本太郎が「美しいと綺麗は違う」と言ってた。そんな風に、「生きているもん」ってのは人だろうが自然だろうが環境だろうが概念だろうが信仰だろうが、必ずどっかださくて下世話で、綺麗とは言えなかったりする。
 けど、それは必ず、美しいんだよ。

 私は、先日行った兵庫近代美術館、安藤忠雄センセー作のいかにもポストモダンでござんすよ、ミニマリズムってかい?な建物より(参照→soWhat?>gallery>photoindex file4)、湯殿山の休憩所の掘っ立て小屋の方が、ずっと美しいと思う。
 何故って、そこは「生きて、使われて」、しかも「信じられている」場なんだもん。ちょろい流行りの綺麗さやお洒落さで勝てるわけがねえじゃん。

わけいってもわけいっても青い山  半径750キロの散策:山形#1 羽黒山・湯殿山_b0016567_21434825.jpg これはねえ、写真取っていい鳥居側で撮ったの。もしかして、あそこもダメだったのかしら。ともかく、これもうまく撮れなかったんですが、曇天の下、このくるくる回るセルロイドの安っぽい風車(転生への願いが込められてるらしいわ)は、怖かったよ。

 月山は、行きはぐれた(藁)。昔、森敦の「月山」読んで大感動したマミーは、馬鹿と怒ったけど、道わかんなくなったんだもん。湯殿山から登山口もあるけど、登れるわけねえだろ、この私が。んでも、翌日、ドライブの途中にふと見えた山がある。多分、これが月山。
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by acoyo | 2006-07-19 21:55 | 半径○キロの散策 | Trackback | Comments(12)
Commented by tonbori-dr at 2006-07-19 23:24
東北方面は未だ未踏地ですがやはり色んな意味で手が入ってないトコがありますなということと人口密度の薄さが伝わってきますねえ。そこがまたいいなあ。
Commented by nonkey37 at 2006-07-20 08:45 x
関西地方の山々や森というのはどこか丸みがあって包容力のある雰囲気を感じるのですが、東北方面の山々って人間を超越した「原始」を感じますね。
山形には行ったことがないのですが、この「原始」ってやつ佐渡で感じたことがあります。そっちは海でしたが。
自然のなかで一体化する感じはなかなか言葉で表現しきれないですよね。
Commented by 夏葉 at 2006-07-20 12:32 x
お帰りなさいませ、姐様。
羽黒山は、一度は行ってみたい場所です(ただし春以外←花粉症)。
神社仏閣めぐりがすきなので、こういう場所は妙に心が落ち着いてしまう日本人です。
いい写真をありがとうこざいました!
Commented by jaguarmen_99 at 2006-07-20 16:55
へえ、写真とっちゃダメなんですか。しかし鳥居は確かに荘厳です。自然への畏れを感じます。曇りだからかなぁ。
Commented by manyana at 2006-07-20 19:50
さっきまで恩田陸「黒と茶の幻想」を読んでいたんですけど、舞台が屋久島(小説ではY島となってましたけど)で「いつか行きたい場所」ではあったけど、増々行ってみたくなっていたトコロです……。
が、あこさんのコレ読んでたら「その前に山形だろ」って気になりましたです。

>セルロイドの安っぽい風車(転生への願いが込められてるらしいわ)は、怖かったよ。

キカイ的な音、生活の音が何も聞こえない中でカラカラと風車の回る音だけが響いているトコロを想像すると、なんかやっぱ、ちょっと怖いかもです。
個人的にはマニ車を連想しちゃうんですよね。アレは1回まわすと1回教典を読んだ事になるってことで、転生ではないですけどね。
何故だろう。
Commented by starrish at 2006-07-20 22:11 x
羽黒山は確かに厳粛・荘厳という言葉が似合うような重々しい山ですよね。外界と隔絶されてる感があります。それにしても、五重塔までってかなり手前じゃないですか?笑
あ、月山はスキーに行くところですよ。
Commented by PiuLento at 2006-07-20 22:46
いいです。月山だけでなく、羽黒山、湯殿山にも行っておけばよかったなあと思います。次は絶対に三山を回りたいです。ああ、いつになることやら。。。
Commented by acoyo at 2006-07-20 23:03
★tonbori-drさん
大阪から行くのは大事ですが、是非、足を伸ばされることをお薦めします。今なら、ホント、手が入ってない!(その分、大変ですが。何度ナビに見放されたか……)

★ninkey37さん
ええ、関西の山は丸い、はっきり言えばぬるい(藁)。人の手入りまくってるし。それはそれであの穏やかさがこっちは血肉化してるし、愛してますけどね。
普段、自分がそういうぬるい山ん中に住んでるので、山は特に気になるのかもしれません。佐渡は凄く行きたいんですよ。あそこには何かとんでもないもんがありそうで。

★夏葉さん
戻ってまいりました。羽黒山、是非どうぞ。ただし、確かに春は近づかない方が懸命かと。日本全国の花粉病に山形の杉は貢献してるそうですから。
下手な写真ですが、喜んでもらえると嬉しいですぅ♪
Commented by acoyo at 2006-07-20 23:10
★じゃがさん
普通、こういう鳥居って引きそうなんですがね。引かなかったなあ、そこが何とも雰囲気。しかし、やはり曇天+霧のパワーもあるかしらん。

★まにゃーなさん
実はね、東北行き決める土壇場まで、沖縄と屋久島で迷ってたんですよ。ただ、屋久島は「縄文杉見るのに20キロ、しかも途中であっちゃん歩けないになってもどこにも戻るすべはないんだぞ」とシーゴラスに言われ、沖縄は「夏の沖縄にあんたが行ったら絶対倒れる」とマミーに怒られ、結局、東北となった次第で。こうなったら、ちびちび北上して知床まで行ってから、今度は西に向かいます。
マニ車は私も考えました。「回す」って言う行為を何かになぞらえてるとこが同じだからかな。ともかく、「しんしんと来る」光景でしたね。
Commented by acoyo at 2006-07-20 23:16
★starrishさん
お薦めの通りステキな地でございまして。さくらんぼも魚もお酒も堪能いたしました。ただ、お宿のお漬物はもう少し薄く切って出していただいた方が……(爆)。
比叡や高野山より、羽黒山は「重い」というか「重厚」な感じでしたね。緑の奥行きの違いからかもしれません。そいで、ええ、そうです。すいません。五重塔なんてへたれの極みです。おじいちゃんおばあちゃんがすいすい歩いて行く横で、既に青ざめていたわたくしでございます。とほほ。
それに、月山もみんな「登ると凄い」って書いてるもん(涙)。

★PiuLentoさん
あそこは絶対に、お好みですってば。私は無理だけど、PiuLentoさんなら、吟醸酒飲みながらでもやすやすと本宮まで行けるだろう(羨望)。あたしゃ、スポーツドリンク飲みながらでもすぐ果てましたが。
Commented by umaco at 2006-07-21 13:34
濃いです!緑なのに緑ってい言葉で片付けるのが惜しい濃さ
色が重なり 光が重なり なぜか「もったいない」気にさせる風景です
(「もったいない」が流行ってるみたいですが 言葉教えるより実感せろと思うのです・・ってのは余談です)
これを切り取るにはEOSですら役不足かもしれませんよ(笑)
Commented by acoyo at 2006-07-22 10:31
★umacoさん
そうです。緑が濃くて、「緑の山」とか「青い山」とかも実は、そう単純に言えないの。どしんと濃くて重い感じ。
その「もったいない」ってわかりますね。どっかで「ありがたい」にも繋がってると思う。でも、とてもいいとこですが、奈良や高山なら「住みたい!」と思うんですが、私には住むところではないようです、行くとこだな。
自然って、みんな撮りますがね。私にはとても難しい。何故って、家やモノなら、対象が絞れやすいんですが、360度のパノラマってのはどうしようもない(爆)。EOSでも無理ですねえ、これはプロのお仕事でないと。