追悼ロバート・アルトマン 彼は猥雑で混沌とした「世界そのもの」を描き続けた。
■ロバート・アルトマン
●[訃報] 映画監督ロバート・アルトマン(81)死す!(The MouvieBuff Diaries)
●アルトマンが逝った(web-tonbori堂)
My love for filmmaking has given me an entree to the world and to the human condition.ごめんなさい。レスはさぼるわ、メールのお返事もしないわで。つうのは、数日前、↑tonboriさんの記事でアルトマンが亡くなったことを読み、ショックだったのよ。だもんで、ぼーっとしてたの。個人的に喪に服してたってとこか。
映画製作に抱くこの愛こそが、私に、世界や人間のありようへと入って行く道を開いてくれた。(Robert Altman)
まあ、服喪中つうことで何してたかと言えば、買ったり録り貯めたりした一連の作品を観返したり(まあ我ながら持ってるもんだと思った)、Kさんと二月分の細かい打ち合わせしてたり、「メタルギア3」をやり直してたり(アルトマン→「M★A★S★H」→野戦服ってぐー」という思考の流れw)してたんだけどね。
そんで、「カバレリア・ルスカティーナ」の間奏曲なんて聴いてると、ふと涙がにじんだりした。
つうのは、今月は私も個人的にわさわさすることがあって、疲れてたんだわ。そこへ、どん! とこれが降って来て、よくも悪くも引導を渡されたよな気分。俺は先に行くけど、お前、がんばれなと言われたみたいな。え? それてないやん、じいちゃん、私を置いていかないで! とか。いや、それはもう勝手にリスペクトしてた私の一方的思いこみだけどさ(爆)。
だもんで、一応、そんなとっちらかった気分のまんま、先にこのエントリを上げておきます。レスは明日、つけますんで、ホント、いつもごめんなさい。
つうことで、枕終了、以下本編。ツヅク↓
アルトマンと来れば、「群衆劇」となる。私が彼に惚れ抜いてたのもその大家だからだ。
んで、群衆劇というと、「やたらわさわさ登場人物が出て来て覚えづらい」「主役と脇役の区別がつかない」「善玉悪玉わかりにくい」というので、日本ではあまり評判のよくない傾向がある(実際、あの「ER」ですら、実は思うほどには売れてはいない)。おまけに無類の毒吐きオヤジだったもんで、和をもって貴しとする日の本では受けない監督だった。
だから、個人的事情で言えば、アルトマン・スタイルってのは、まずもって編集さんには喜んでいただけない(爆)。当然、ハリウッドのお偉方も喜ばなかった。
実際、寡作だったし、中には正直言って駄作つか「ううん……」てなもんも多い(爆)。要するに困ったちゃんだったのよ。ただ、彼の場合、傑作のレベルが桁違いだったんでさ。
(んで、、三谷も群衆劇と言われてるそうなんだけど、やっぱ三谷は
ほんで、アルトマンの何が凄かったかと言えば、それは彼が膨大な登場人物の裏も表も、短いスケッチでさっと描ききってしまうことで、人物だけでなく、その舞台である世界そのものを描いちゃったからなんだわ。
つまり、米陸軍移動外科病院なり、ナッシュビルなり、金持ちの結婚式の一日なり、ハリウッドなりという、「人がわさわさいる」場そのものがまた、生きて動いている「イキモノ」なんだということを、暗い映画館で私の目の前に繰り広げてくれたわけよ。
人が集まって居る場所、というのは、そんな風にそれもまた有機的な「イキモノ」だ。そして、その「様々な場=様々な世界」はその世界を支える一人一人の視点、複数の生きた人間の視線によって形作られている。だから、とらえどころなく、日々刻々と揺れ動いている。
アルトマンくらい、それを活き活きと描いた監督は居なかった。
だから、アルトマンの映画、アルトマンが描き続けた世界ってのは、一人の視点(それって最終的にはカミサマの視点に近いものになっちまうのな。だって「視点」ってのは世界をジャッジするベクトルですから)から、モノゴトを静的に鋭く描いた作品、つまり精密できちんとまとまった、論旨の明快な作品は一つもなかった。
切り口は膨大過ぎて、浅すぎたり深すぎたり、時として見当外れてたりするのさえもある。そんな風に、彼の描く世界はいつもとっちらかってて混沌としていて、ちょっと見にはわかりづらかった。
でも、いつも生きていた。
さまざまな人の視点や声に満ちていて、わやわやうるさく、猥雑でさえあったけど、アルトマンの描いた世界は、いつも活き活きと「リアルに揺れていた」。
ハリウッドに逆らい続け、奇人変人呼ばわりされたアルトマン(「M★A★S★H」のサザランドとグールドさえ、最初は「この監督、何やってるのか全然わからん。キチガイだ。おちおち芝居してらんねえじゃねえか、死ね!」と思ったらしいw)だけど、私は、彼はヒトというイキモノがとてもスキだったと思う。
ヒトというイキモノがやる愚行も善行も悪行もすべてひっくるめて、スキだった。というか、世界を、さまざまなヒトを眺め続けることにいつまでたっても飽きなかった、それが面白くて面白くてたまらなかったんだろう、アルトマンは。私はそう思う。
それはまあ、「愛」だよね。
でも、彼は、その「飽きない、面白い、スキ」という子供じみた感覚の方を、大事にしてたと思うのね。だって、それが人類愛などという、これまった大仰な言葉で語っちまえば、何かが嘘になっちまうって、アルトマンは誰よりも知ってたと思う。
つか、そういうとこがむしろ、ものすごく潔癖なヒトだったんだわ、私はそう思うのね。
毒吐く人、シニカルな人ってのは、あらゆるうわっちゃれさが嫌で嫌でたまんなから、毒吐くんだよ。音楽界のその道の大家エルビス・コステロがいい例だけど、一生、ガキめいた潔癖さを持ち合わせちまうってな業を背負ってるんだよね。要するに傍迷惑だが、気の毒でもある(爆)。いや、人のことは言えませんけど。
閑話休題。だもんで、そんな風に自分にも他人にも単に迷惑な潔癖さを背負ったアルトマンの作風ってのは、自分の「深い愛」を「興味」というタームに置き換えて抑制をかけているところがある。そのおかげで、彼の傑作における様々な視点へのアプローチは、常にいい距離を保っていられた。べとつかずに済んだ。
それを冷たい、とか、断固として「わかりづらい」と仰有る向きもあるであろう。
でも、そうやってべとつかない彼のアプローチことが、やっぱり、私にとっては「世界への深い愛」なんだわ。
だってね、世界なんて、そんなに単純にわかっちまっていいもんかね?
それって、つまんなかねえか?
私は、彼の描く「わかんないけど面白い」世界に居るのがとてもスキだった。
だから、アルトマンは、私が、最初に、シンパサイズできた大監督だった。
じいちゃんに悔いはないだろう。やりたかねえ作品なんか撮ったことねえと言い切ってたしな。
Still……I miss you, my MAESTRO. それでも、私は寂しいよ。
ここんとこ、大好きだった人、ソンケーしてた人にどんどん逝かれちって、私はすごく寂しいよ。
天国ってのは、ここより面白いですか? やっぱ地獄の方がいろいろあって面白そうだとか、ぶつぶつ言ってませんか?
●「住めば都のフールズ・パラダイス」(soWhat?)
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哀悼の意味を込めて、今度の休日にはDVDで「M★A★S★H」観賞する予定です。
歳食っても枯れないジサマだったね。ジジイになってもなおコッテリしたジサマだった。
それでも、ビョーキには勝てないんだね。
けどacoサンの落胆はウチのコメントだけでも察するあまりありました。
あたらめてご冥福をお祈りしたいです・・・。
あと、こういう面白さを期待できそうな監督って、テリー・ギリアム監督とかかな。the player が好きだったっけなぁ。わくわくしたもの。
>それは彼が膨大な登場人物の裏も表も、短いスケッチでさっと描ききってしまう
短編小説の名手はわずかな描写で的確に登場人物のキャラクターを読者に理解させますが、アルトマンもそれに通じるところがありましたね。
そういえばアルトマン、オムニバスの『アリア』の中の短編も変わってましたねぇ。すっかり忘れていた映画ですが、あれってDVD入手できるのかな。
SUICIDE IS PAINLESSは、どっかのパンク・バンドがカバーしてて、それ今、探してるんです。インディ系の映画で使ってたと思うんだけど。
★森と海さん
>ジジイになってもなおコッテリしたジサマ
なんつうかねえ、戦後生まれってどう転んでもそういうじじいになりそうもない気がしませんか? いや、ばばあもそうなんだけどさ。
★wake1さん
そうだよ、お亡くなりになってしまったのだよ。
★tonboriさん
まあ、その二本観てればほぼOKという(爆)。彼の最高傑作ですから。当たりはずれはある人ですもんで。
★じゃがさん
奇才というよりは、「イヤなじじい」というのがぴったりだと。
★ゆみたん
テリー・ギレアムはちょっと違うと思う。線は細いけど、PTA(ポール・トーマス・アンダーソン)が少しそんな感じしたんだけど、あいつ今、どうしてるんだろ。
『ゴスフォード・パーク』はアメリカ人監督にありがちな「えげれす有り難い病」から免れていて、さすがあの因業じじいと(爆)。
「アリア」ですかあ。どうなんだろうなあ。実際、アルトマンって正規作でも入手困難が多くて(爆爆)。むしろ、CS放送の方が役に立ってくれてますね