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Jeff BuckleyのHALLELUJAH 再び。

 ドキュメンタリー発売記念十二回忌163分映画レビューの前ふり兼ねて、閉めた某所より転載。但し、映画で使ってたのはレナード・コーエンのオリジナル・ヴァージョンだけど。

  ……つうことで、某所にあった訳詞群サルベージ計画第一弾は、この歪んだ壽歌。前上げた時は音源出せないのがホント哀しかったしなあ。


参照エントリ●冷たく壊れた「神を褒め称えよ」

Jeff Buckley HALLELUJAH with Lyrics






HALLELUJAH   (ver.JEFF BUCKLEY from GRACE)

そう、聖なるコードがあると聞いたことがある
ダビデが王を喜ばせるために奏でたコードが *1
けど、あなたは音楽なんてまるで興味はない、だよね?
そう、それはこんな風、
四度から五度の和音に、短調で下り、長調で上がる
悪鬼に悩む王様が作曲したハレルヤだ

ハレルヤ 神は褒むべきかな……

あなたの信仰は強かったけれど、証が必要だった *2
あなたは屋上で湯浴みする彼女を眺めた
彼女の美しさと月明かりが、あなたをのめりこませた
そして彼女は自分の御厨の椅子にあなたを縛り付け
あなたの王座を打ち砕き、あなたの髪を刈った
そして、あなたの唇から、「ハレルヤ」を引きずり出した

ハレルヤ 神は褒むべきかな……

そう、ベイビー、ここには前にも居た
僕はこの部屋を見ていたし、この床を歩いた
(知ってるだろ?)あなたを知るまで、僕は孤独だった  *3
そして、あなたの旗が大理石の穹に翻るのを眺めた
そして、愛は勝利の行進じゃない
それは冷たく、壊れたハレルヤなんだ

ハレルヤ 神は褒むべきかな……

さあ、あなたも僕に知らせる時が来た
この地の下で何が本当に起こっているのか *4
けれど、あなたは決して見せようとはしない、だよね?
けれど、あなたの中に僕が踏み入った時を思い出して
聖なる鳩もまたあなたの中に舞い飛んできて
僕らが紡ぐ一息一息がハレルヤだったことを

神は褒むべきかな 神は褒むべきかな……
神は褒むべきかな……

天の高みに神はおわすかもしれない 
けれど、俺が愛から学びとったのは
 どうすれば撃たれる前に撃てるかってことだけだ
今夜、あなたが聴くのは叫びじゃない、 
光に導かれてきた誰かの声なんかじゃない *5
それは冷たく、壊れたハレルヤなんだ

ハレルヤ 神は褒むべきかな……

*1 ファースト・ヴァースのDavid played and it pleased the Lord~は旧約聖書サムエル前書16章にあるダビデとサウル王の逸話から。悪鬼に苦しむ王を慰めるため、牧者だったダビデが竪琴を奏でるという場面で、そのためここのLordは主ではなく、王としたが、本歌の作者コーエンはここで大文字のLordを使って二重の意味に取らせてる。baffed kingという言葉も「混乱した王」程度の意味だが、聖書の通りに「悪鬼に悩める」と訳した。ちなみにサウル王をそんな痛い目にあってたのは、「エホバの恩寵」から離れたせい。
*2 Well your faith was strong~、これもおそらくサムソンとデリラの話(旧約聖書 士師記)。
*3 ここのknew yaのyaを、「神」と訳してるのも多い。悩んだけど、「あなた」に戻した。だって、そこで限定したら、この歌全体のyou自体、誰なのかって話になるじゃないのさ。
*4 What's really going on belowのbelowは、「地獄」ですが、そのまま訳した。
*5 この光に導かれて来たsomebodyは「巡礼者」らしく、前出したときはそう訳してたが、考えてみれば、ここでもまたあえて「誰か」と言ってるわけなんで、そう直した。


 ちなみに、このIt's a cold and It's a broken hallelujah、冷たく壊れたハレルヤという言葉が、この歌そのものなのだ、とレーナード・コーエンは申しております。
  何にせよ、敵は詩人様でいらっしゃるわけで、となると実際、非学浅才なわたくしごときの手に負えるものでなく、かなり間違いも読み落としもあると思われ。ご寛恕ください。
 そんで、こっちが御大のオリジナル。

 まあ、今では、ジェフ・バックリィの一人勝ち状態だが、私の中ではこの二つは並び立つ存在なのな。そりゃ、あっちは確かに「夭折を予感させる悲しさと美しさ」が圧巻で、Bonoの言った通り、「「ノイズの海の中の濁りのない一滴」だが、こっちには「生き延びちまった者の苦さと重さ」がある。怖いくそじじいが歌う、怖い歌だ。

 も、長くなりついでで、Bonoのカヴァーも。

 ここでbonoがHallelughのリフ以外は呟きというか囁きに徹してるのは、いろいろ思うことがあったんだろうけれど(藁)、結果、一人負け。……まあ、悪くはないよな。コーエンもお世辞半分で褒めてたし。
 けど、もし、Bonoが十八番の「天は墜ちよ地も裂けよ、我が身と心も共に砕け散れ」流の、思い切り前のめりにエモーショナルな歌い方でこれ演ってたら、どうなったかなあ、と時々思う。勝てはしないまでも、引き分けには持ち込めたんだじゃないかと。
 ボノだって相当、起爆力の高い、烈しいヴォーカリストですから。(暑苦しいとも言う。それは認める)
by acoyo | 2009-04-28 00:41 | 歌のチカラ(含訳詞) | Trackback | Comments(7)
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Commented by belltone at 2009-04-28 10:16
ボノ・・・(´;ω;`)いや、まあ彼の声質だけで価値はあるとは思うんですが、炎のようなヴォーカルが聞けずにもったいない、という印象です。仰るとおり、ボノがエモーショナルに歌っていたら相当いけてたんじゃないかなあ、と残念です。

Davidって誰なんだろう、と思っていましたがダビデかあ!!と目から鱗が落ちました。詩人の書くこういった”一般常識としての聖書の引用”は聖書を読んでいない人間にはなかなか気付き難いところですね。

ya の訳は、仰るとおりですし、神をya扱いするはずもないので、一般的な誰かを指すyouでしょうねえ。あと、コードの辺り(4th,5thというところ) も何か意味を持たせているような気もしますが音楽的な解釈しか思いつかない僕は詩人とはほど遠いですねえ。4thが長調で5thが短調という事はメジャーキーのドミナントマイナーという事で特に変わった進行ではないのです。lordつながりで言うと、ジョージ・ハリスンのMy sweet lordが丁度4thが長調で5thが短調の曲ですね。あ、気付いたらどうでもいい薀蓄を長々と・・・。スイマセン
Commented by acoyo at 2009-04-28 10:51
★belltoneさん
あ、そっちにコメントつけて戻ったら、すれ違いだあ(藁)。
でしょ? ボノはこの頃からカバー上手くなってきてたので(この頃になってやっと、とも言う)、期待した分、ちょっとね……。まあ、同時期にこのバックリィのがあったんで、意識したんだと思いますが。
聖書は読んでも面白いですよ。あっちの創作品の最大のネタ元ですから。手元にあると便利です。日本語訳なら文語版が素敵。
そいで、蘊蓄だなんでとんでもない。そういうのは全然暗いんで助かります。ああ、そうか、ドミナントマイナー(名前だけ知ってたw)か。ありふれた歌だって言いたかったのかな? クラッシックじゃなくて、ポピュラーで多用されるコード進行だってとこがポイントですかね?
んで、yaの件は私もそう思うんですが、詩人なんで何するかはわからない(爆)。でも、ダブルミーニング、トリプルミーニングの言葉の場合、日本のプロの訳詞家さんは、「正しい意味」で訳す傾向があって、そうなると「歌う言葉=詩」である意味がなくなっちゃう気がするんですね。
そうそう、ジョニー・キャッシュの件ですが、クレジット見ないとわかんないんだけど、PCに落とした後、CD本体どこしまったか不明で(爆)。
Commented by belltone at 2009-04-28 20:31
あ、ごめんなさい、何か混乱したのかあべこべに書いてます。4thが長調で5thが短調⇒4thが短調 5thが長調、ドミナントマイナー⇒サブドミナントマイナーに置き換えていただければ正しいです。古典楽典ではサブドミナントがマイナー(7th)になる事は無かったろうと思うのですが、JAZZではもっとも代表的なコード進行(いわゆるツー・ファイブというヤツです)ですので、古典楽典から見た場合は、悪魔的かもしれません。ちなみに、ドミナントマイナーというのもありますが、サブドミナントマイナーに比べて稀です。

やっぱり詩にはリズムというかライムも必要ですよね。それを考えると訳詩はますます難しくなっていくのですが・・・。ジョニー・キャッシュの件、ありがとうございました。僕もクレジット書いてあるものを紛失しているのですが、どうもやってないような気がします。
Commented by bluegene at 2009-04-28 22:50 x
この曲、映画やドラマでよく使われますが、『シュレック』は映画ではジョン・ケール版だったのにサントラに入ってたのはルーファス・ウェインライト版という不思議なことになってました。

一人勝ちということはこのジェフ・バックリィ版が一番人気なんでしょうか?私はあまり聞き覚えがないんですが・・・聴く音楽の幅が狭いので世の中からズレズレになってます orz

『ウォッチメン』ではアリソン・クロウ版を使う予定をコーエン版に変更したそうですね。クロウ版は美しすぎてそぐわなかったそうです。そもそもこの曲自体がシーンにそぐわない気がするんですけど・・・。性的不能が治って天にも昇る心地だったんでしょうか (^^;; コーエンが二曲使われてるのは監督の趣味なのか、単にManhattanという単語が入っていたからか、どっちなのか悩むところです。
Commented by kiyotayoki at 2009-04-29 17:08
バックリィ版のやつ、こないだNHKでやってた『白洲次郎』のエンディングあたりに流れていたように思います。
詩を気にしたことがなかったので、acoさんの訳詞、しみじみと味わわせていただきました♪
Commented by acoyo at 2009-04-30 10:51
★belltoneさん
またこれで一つ賢くなれました、ありがとう(藁)。いや、マジで。そい、どっちにせよ「古典的、高踏的じゃない」ってとこなんでしょうね。落としどころは。
んで、そうなんですよ。ライム(韻)についちゃ絶望的で、しかも英語詩の場合、それが命にも等しい部分だから、頭イタい。(これがC&Wとかブルースなんかのトラディショナルなものなら、いっそ開き直って演歌調に五七五で訳すとオモロイです)
シェイクスピアの脚本の訳でも、みなさん苦戦してらっしゃいますが、唯一らしくなってるのは名翻訳家中野好夫くらいなもんで、後は……今二つ(大体、大学の英文科のセンセにできる業じゃないだろうし)
Commented by acoyo at 2009-04-30 10:56
★blugeneさん
映画だけでなく、ドラマや海外ドキュメンタリーでもよく使ってます。
>ジェフ・バックリィ版が一番人気
ざっと検索してみた感じでは、そうだと思います。
90年代半ばくらいに大センセーションを巻き起こしていきなり消えてった人なんで、未だに記憶に焼き付いてる人も多いんだと思う。売れ行きは大したことなかったけど、何よりミュージシャン受けの凄い人で、あの年は大騒ぎでしたからね。確か、モリッシーも褒めてたような……(?)。
『ウォッチメン』の件は、いずれレビューで(藁)。

★kiyotayokiさん
白州次郎は大好きなんですが、この歌とはなんか結びつかないなあ(藁)。
オリジナルのコーエンという人は、向こうではかなりポピュラーなというか、カバーされまくってる人の上、小説家で詩人さんですから、気付かずに彼の歌聴いておられるケースは多いと思います。