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『さすらいのカウボーイ』 もう一度観るのが怖い映画

 こないだ、三枚買い込んだHMVで、このDVDはまだ棚に在った。この店に来るたび、私はそれがまだ在ることをわざわざ確認して、ほっとする。そして、一度は手に取るが、レジ前まで言って結局、回れ右する。

 ストーリーは、公式HPより引用。
19世紀末のアメリカ西部。『さすらいのカウボーイ』 もう一度観るのが怖い映画_b0016567_15193645.gif

永年の放浪の末、さすらいの日々に終止符を打つべく、放っておいておいた妻子のもとへ戻る決意をするハリー。
ある事件がもとで、それまでの旅の連れアーチを伴って、帰ることになった。出て行ったきりの夫が突然現れた時、妻のハンナには喜びのかけらもなく、そればかりか夫として家に戻る権利はないとつきはなす。ハリーはそんな怒りを当然のことと受け止め、なんの見返りもなしにただの使用人-hired hand-として、働くチャンスを与えてくれと頼む。そして、ハリーはまじめに働き、少しずつハンナの信頼を取り戻していくのだった。
一方、ハリーが家に落ち着いていく様子を見るにつれアーチは、ハリーの新たな生活にいつかきっと、自分が邪魔な存在になると確信する。出発の時を感じたアーチは、ひとりもと来た道へと去って行った。
しかし…。

 これを観たのはTVだった。とても小さな頃、NHKだったと思う。
 あまりに地味であまりに淡々とした話だったが、画面の美しさには子供心に目を惹かれた。そして、どう言葉にしていいかわからなかったけど、ある種の感情はひしひしと伝わった。「悲しい」と「哀しい」と「切ない」の区別もつかない年だったのだけれど、あれは「切ない」ということだった。
 もう少し後になって、今度は地方局の深夜枠で観た。そして、忘れられない一本になった。
 あっさり言っても、監督・主演のピーター・フォンダ、フォンダ家の不肖の倅、一世一代の傑作だと思う(今はいい演技者ですけど)。ブリジット・フォンダがどっかで、あの一作だけでも十分、父親を誇りに思うって言ってた。アメリカン・ニュー・シネマというものが最後に産んだ、幻の光みたいなものかな。向こうでの評価は高く、西部劇の隠れた傑作という位置にあるみたい。
 ストーリーは違うけど、肌触りがどこか『天国の日々』に似ている、気がする(撮影のせいかな)。そう友だちにもさんざん言って回ったのだが、ビデオさえなくて、誰にも観てもらえなかった。
 それが去年、リバイバル上映され、DVDにもなった。ちょっと大きめのレンタルビデオ屋なら置いてあると思う。うちの近所にもある。
 
 そこで、めったに貸し出しもされず棚ざらしになってあるのを見るたび、私は手を伸ばしては止める。リバイバルの時も行かなかった。
 同居人も観てないので是非見せたいのだが、子供の時に、膝を抱え、画面で何が起こっているのかもよくわからないままに、ただ「切なさ」の感覚だけを味わっていたものが、今観るとどうなるかが、とても怖い。何せ、いたずらに年だけ食ってしまったわけだし。
 
 だもんで、私に度胸がない分、まだ観てないって人、よければ観てください。共演はウォーレン・オーツです。彼の名演の一つです。撮影はヴィルモス・ジグモンドです。音楽はブルース・ラングホーンです。……って、一部の人にしか説得力がない台詞で、ゴメン(藁)。

「さすらいのカウボーイ」公式HP

追記;書き終えて思い出した。そう言えば、昔、オールタイムベスト10企画で、渋谷陽一がこれを入れてた。あの世代のおやじには、青春の一本なんだろうなあ。
by acoyo | 2004-10-06 15:21 | 映画・ドラマ | Trackback(1) | Comments(1)
Tracked from ぶーすかヘッドルーム・ブ.. at 2006-03-25 21:37
タイトル : 「山猫」「さすらいのカウボーイ」「永遠に美しく」
●永遠に美しく……………★ ●さすらいのカウボーイ…★★★ ●山猫 完全復元版………★★★★★ テレビ放送で見た上記の作品の感想をそれぞれのリンクにUPしました。よろしければ御覧下さい。 「山猫」このヴィスコンティの名作を久しぶりに見ましたが、最初に見た時よりも映像が美しい!音がイイ!バート・ランカスターが最高にイイ!そして、最初に見た時には理解できなかった良さが何となく分かり好きになりました。うーむ、それだけ歳をとったということか? 「さすらいのカウボーイ」ピーター・フォンダ監督・主演の西...... more
Commented by booska1234 at 2006-03-25 21:38
はじめまして。「さすらいのカウボーイ」私も観ましのでTBさせてください。どうぞよろしくー。